日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒトジラミ」の意味・わかりやすい解説
ヒトジラミ
ひとじらみ / 人虱
human-louse (lice)
[学] Pediculus humanus
昆虫綱シラミ目ヒトジラミ科に属する昆虫。この種にはヒトの頭髪につくアタマジラミP. h. humanusと、体と触れる衣服につくコロモジラミP. h. corporisという二つの亜種(または生理的品種)が知られる。このすみ分けは顕著で、互いに領分を侵さない。アタマジラミは雄2.3ミリメートル、雌3.3ミリメートル、コロモジラミのほうはこれよりやや大きい。成虫は吸血すると2、3日で産卵し、卵は6、7日で孵化(ふか)、幼虫は3回脱皮して約10日で成虫となる。人から人へ伝播(でんぱ)し、とくに不潔な人に発生しやすい。発疹(はっしん)チフス、回帰熱(再帰熱)、五日熱(塹壕(ざんごう)熱)などの伝染病を媒介する。ヒトジラミ科Pediculidaeには、ほかに陰毛につくケジラミPthirus pubisがある。駆除には、いずれもDDTが特効薬であったが、近年抵抗性を生じ、薬剤の改変を余儀なくさせられている。
[山崎柄根]