改訂新版 世界大百科事典 「ヒドロ虫」の意味・わかりやすい解説
ヒドロ虫 (ヒドロちゅう)
ヒドロ虫綱Hydrozoaの腔腸動物(刺胞動物)の総称で,5目に分けられる。一生の間,定着性のポリプ型のみ,あるいは遊泳性のクラゲ型のみ,またはポリプ型からクラゲ型を経て世代の交替をするものがある。ポリプの体制は簡単で,胃腔内に隔膜がなく,口盤の周辺部を触手がとりまいている。ヒドラ,オトヒメノハナガサ,クダウミヒドラなどは単体であるが,大部分のポリプは仮根をだして他物に付着し,枝分れしたヒドロ茎hydrocaulusをつくって群体を形成する。クラゲ型はヒドロクラゲとよばれ,一般に小型で構造は簡単である。傘は皿形や深い釣鐘形で,周縁に触手があり,眼点や平衡器もある。また傘の中央から下方に向けて長い口柄がで,その先端に口が開いている。傘の内側に沿って縁膜(えんまく)という狭い膜があり,これがヒドロクラゲの大きな特徴になっている。カツオノエボシやバレンクラゲなどのクダ(管)クラゲ類は,上端に泳鐘(えいしよう)といううきがあり,その下部はいろいろな機能をもったポリプによって構成されている。高さ5cmほどのクダウミヒドラが海水中の漁網や諸施設に密生して害を与えることがあり,またカツオノエボシ,カギノテクラゲなどは強い刺胞毒で水泳している者を悩ます。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報