日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒナバッタ」の意味・わかりやすい解説
ヒナバッタ
ひなばった / 雛蝗
[学] Chorthippus brunneus
昆虫綱直翅(ちょくし)目バッタ科に属する昆虫。茶褐色の目だたない小形から中形のバッタで、平地から山地にかけてみられる種。鳴くバッタの一つ。体長は雄で15~18ミリメートル、雌はやや大きくて19~26ミリメートル。一般的な体色は茶褐色であるが、黄、緑、紫色のものまで色彩変化に富んでいる。前胸背板の背面左右の縁は灰白色で、やや内方に「く」の字形に曲がり、その内方は煙黒色となるのが普通である。後脚の膝部(しつぶ)はわずかに黒ずむ。また、後脚腿節(たいせつ)内面の基部に黒紋がある。茶褐色の前翅は中央よりやや先のほうに淡灰色の紋を1個もち、後翅は透明である。雄の亜生殖板は後方にほとんど伸びない。雄は前翅と後脚腿節内面をこすり合わせ、シュルルルと鳴く。高原の草地に多く、日本全土にみられ、また旧北区に広く分布する。類似種に山地性のヒロバネヒナバッタC. latipennisがあるが、この種は全体に色彩が濃く、雄の前翅が幅広い。また、後翅は煙黒色をしていることで区別できる。
ヒナバッタ類は北アメリカにいる1種を除けば、すべて旧北区に分布し、寒地にも適応できた種群である。草原のイネ科植物上をおもなすみ場所にしており、日中雄はじみな音を出して鳴く。高山にすむものには、雌ではねの強い退化がみられる。
[山崎柄根]