ヒーガー(読み)ひーがー(その他表記)Alan J. Heeger

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒーガー」の意味・わかりやすい解説

ヒーガー
ひーがー
Alan J. Heeger
(1936― )

アメリカの物理学者。アイオワ州スーオク市に生まれる。ネブラスカ大学で物理学と数学を専攻し、カリフォルニア大学バークリー校に進学。理論物理を志すが、教授の勧めで実験物理を学び、1961年物理学で博士号を取得。1962年ペンシルベニア大学助教授、1967年同教授を経て、1982年からカリフォルニア大学サンタ・バーバラ校教授となる。

 物性物理の分野から研究をはじめ、1975年に同じくペンシルベニア大学の化学教授A・マクダイアミッドと高分子硫化窒素(SNXの金属的性質についての共同研究を始める。1976年に東京工業大学の白川英樹が、伝導性を有する新しいポリアセチレンをもってマクダイアミッドグループに参入し、物理学的にその伝導性の研究を行った。1977年、伝導性をもつポリアセチレンを開発し、その功績により無機化学者であるマクダイアミッドと有機化学者である白川とともに2000年のノーベル化学賞を受賞した。物理学と化学の境界を越えた新たな研究分野の確立に至った功績は非常に大きく、その後も半導体ポリマーや、ポリマーLEDなど新たな素材をテーマに研究を続けている。

[馬場錬成 2018年10月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒーガー」の意味・わかりやすい解説

ヒーガー
Heeger, Alan

[生]1936.1.22. アイオワ,スーシティー
アメリカの物理学者。 1961年カリフォルニア大学バークリー校で物理学博士号を取得。 82年カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授および同大学高分子・有機固体研究所所長に就任。 88年にユタ大学で物理学の准教授を兼務し,99年にはみずから創設した UNIAX社の主任研究員となる。 1976~77年,ペンシルバニア大学で A.マクダイアミッド白川英樹ポリアセチレンに導電性を与える実験を理論面で支え,電気化学的ドーピングによるヨウ素添加で金属並みの導電性をもたせることに成功した。その後は独自に高分子半導体の発光現象 (光発光とエレクトロルミネッセンス) を研究,発光素子の開発を手がけた。 2000年,導電性高分子の発見と応用により,白川,マクダイアミッドとともにノーベル化学賞を受賞。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

化学辞典 第2版 「ヒーガー」の解説

ヒーガー
ヒーガー
Heeger, Alan J.

アメリカの物理学者.ロシア系ユダヤ人の移民の三代目として,アイオワ州Sioux Cityに生まれる.ネブラスカ大学で物理と数学を学び,1961年カリフォルニア大学バークレー校でPh.D.を取得後,ペンシルベニア大学で教べんをとり,1967年から同大学教授となる.ポリチアジルの電気伝導性に興味を抱き,A.G. MacDiarmid(マクダイアミッド),白川英樹らとともにポリアセチレン研究を行う.1976年ドーピングによってポリアセチレン膜の電気伝導性が飛躍的に向上することを発見した.電気伝導性高分子の応用にも熱心に取り組み,多くの特許を取得したほか,1990年同僚とともに電気伝導性高分子を商品化するための会社(UNIAX社)を設立した.2000年MacDiarmid,白川とともにノーベル化学賞を受賞した.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android