改訂新版 世界大百科事典 「ビロードハマキ」の意味・わかりやすい解説
ビロードハマキ
Cerace xanthocosma
鱗翅目ハマキガ科の昆虫。翅の開張3~5cmで,この科のガの中での最大種である。前翅はビロードのような黒地に無数の黄色短条や小さな紋をちりばめ,基部から外縁に向かって翅の中央を赤帯が走り,外縁部も赤色。後翅と腹部は橙黄色で,黒紋が多数ある。雄は小型で,色彩が濃く,後翅の外半はほとんど黒い。本州(関東以西),四国,九州,屋久島に分布する。年2回の発生で,6~10月に成虫が出る。昼飛性だが,灯火にも飛来する。幼虫はアセビ,ツバキ,カシ類,カエデ類などに寄生するやや緑色を帯びた淡黄色の芋虫で,新しい古いの区別なく葉をつづり合わせて食害する。第2回目の幼虫は,気温が高い間は摂食するが,気温の低下とともに摂食を中止し,仮眠状態に入る。温暖地では,冬の間でも暖かい日には多少摂食するが,寒冷地ではほとんど冬中休眠する。本種によく似たヒロバビロードハマキが北海道と本州(中部山地)に分布している。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報