ファールス(英語表記)Fārs

改訂新版 世界大百科事典 「ファールス」の意味・わかりやすい解説

ファールス
Fārs

イラン南部,フージスターンイスファハーンケルマーンペルシア湾に接する地方。現在,イランの州の一つで面積約15万m2,人口439万(2005)。州都シーラーズ。ほかにカーゼルーン,ファサー,ラールなどの町がある。前1000年代にアーリヤ系のペルシア人が来住,この地はパールサPārsaと呼ばれた。英語のペルシアはそのギリシア語形ペルシスPersisに由来する。アケメネス朝,ササン朝興隆の地で,ペルセポリス,ナクシ・ルスタム,パサルガダエ,フィルザバードなど古代の遺跡が多い。シーラーズを都としたブワイフ朝,ファールス・アター・ベク朝,ムザッファル朝,ザンド朝下で繁栄を享受した。カシュガーイー族ハムセ族などの部族民が多く住む。比較的肥沃で,穀類,かんきつ類,綿花,テンサイなどを産する。ブワイフ朝下で971年にシーラーズの北方を流れるコル川に長さ120mの大堰堤(バンデ・アミール)が造られ,流域で新耕地開発が進んだ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ファールス」の意味・わかりやすい解説

ファールス
ふぁーるす
Fārs

イラン南部の州。ザーグロス山脈の東部に位置し、南はペルシア湾に面する。面積12万1825平方キロメートル(2000)、人口413万5251(2002推計)。州都はシーラーズ。イラン高原中でも肥沃(ひよく)な地で、穀物、柑橘(かんきつ)類、ブドウ、綿花、サトウダイコンなどを産する。カシュカイ人、ハムセ部族連合などの遊牧民が多く住み、その移動距離は600キロメートルを超える。古代の地名はパールサPārsaで、そのギリシア語形ペルシスPersisが英語のペルシアPersiaの語源となった。

 紀元前二千年紀よりペルシア人が住み着いたこの地は、アケメネス朝、ササン朝興隆の地で、ペルセポリス、パサルガダエ、ナクシュ・イ・ロスタム、などの遺跡が多い。ブワイフ朝、ファールス・アタベク朝、ムザッファル朝、ザンド朝はシーラーズを首都とした。ブワイフ朝のアズドッ・ドウラは、紀元後971年、北部を流れるコル川に長さ120メートルの大堰堤(えんてい)(バンデ・アミール)をつくり、多くの村を開発した。

[岡﨑正孝]


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世界大百科事典(旧版)内のファールスの言及

【ササン朝美術】より

…シャープール1世(在位240‐272)のビシャープールBishāpūrやクテシフォンの宮殿,カスル・イ・シリーンKasr‐i Shirīnのチャハル・カプ宮殿などはいずれも左右対称的なプランを示しており,ササン朝宮殿建築の一つの特色を示している。 神殿の遺構としてはゾロアスター教の〈拝火神殿〉が50ほど知られ,その大部分はファールス地方に残されている。ゾロアスター教の神殿は基本的には二つの方形建物からなり,一つは聖火を安置する閉鎖的なもの(アタシュ・カデーAtash‐kadeh)で,もう一つは聖火を公開するときに用いる開放的な建物(チャハル・タークChahar‐tāq)である。…

【ペルシア】より

…おもに欧米で用いられてきたイランの別称。もともとはアケメネス朝が拠ったイラン南西部の一地方名パールサPārsa(現代ペルシア語ではアラビア語化されたファールスFārsとして残っている)に由来するが,アケメネス朝のイラン高原統一によってイラン全体を含む概念に拡大された。アケメネス朝期のギリシア史家の用いたペルシスPersisが,ラテン語形ペルシアを経て,ヨーロッパに入ったものである。…

※「ファールス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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