日本大百科全書(ニッポニカ) 「ファールス」の意味・わかりやすい解説
ファールス
ふぁーるす
Fārs
イラン南部の州。ザーグロス山脈の東部に位置し、南はペルシア湾に面する。面積12万1825平方キロメートル(2000)、人口413万5251(2002推計)。州都はシーラーズ。イラン高原中でも肥沃(ひよく)な地で、穀物、柑橘(かんきつ)類、ブドウ、綿花、サトウダイコンなどを産する。カシュカイ人、ハムセ部族連合などの遊牧民が多く住み、その移動距離は600キロメートルを超える。古代の地名はパールサPārsaで、そのギリシア語形ペルシスPersisが英語のペルシアPersiaの語源となった。
紀元前二千年紀よりペルシア人が住み着いたこの地は、アケメネス朝、ササン朝興隆の地で、ペルセポリス、パサルガダエ、ナクシュ・イ・ロスタム、などの遺跡が多い。ブワイフ朝、ファールス・アタベク朝、ムザッファル朝、ザンド朝はシーラーズを首都とした。ブワイフ朝のアズドッ・ドウラは、紀元後971年、北部を流れるコル川に長さ120メートルの大堰堤(えんてい)(バンデ・アミール)をつくり、多くの村を開発した。
[岡﨑正孝]