改訂新版 世界大百科事典 「フッ化コバルト」の意味・わかりやすい解説
フッ(弗)化コバルト (ふっかコバルト)
cobalt fluoride
フッ素とコバルトの化合物で,酸化数ⅡおよびⅢの化合物が知られている。
フッ化コバルト(Ⅱ)
化学式CoF2。無水和物は無水塩化コバルト(Ⅱ)をフッ化水素気流中で300℃に加熱すると得られる。淡紅色正方晶系結晶,ルチル型構造。融点約1200℃,沸点1400℃,比重4.46(25℃)。水100gに対する溶解度1.415g(25℃)。毒性が強い。水酸化コバルト(Ⅱ)や炭酸コバルト(Ⅱ)を過剰のフッ化水素酸に溶かし,蒸発濃縮すると条件により2,3,4水和物が得られる。共に淡赤色の結晶で,4水和物にはα,βの変態がある。
フッ化コバルト(Ⅲ)
化学式CoF3。無水和物は無水塩化コバルト(Ⅱ)をフッ素気流中で250℃に加熱すると得られる。淡褐色粉末。六方晶系。融点926±200℃,比重3.88。湿った空気中ではただちに暗褐色となる。他の物質とともに熱するとフッ素化し,みずからはフッ化コバルト(Ⅱ)に還元されるので,フッ素化剤として用いられる。毒性が強い。3.5水和物CoF3・3.5H2Oはフッ化コバルト(Ⅱ)の40%フッ化水素酸溶液を電解すると得られる。緑色粉末。真空中では安定。フッ化水素酸中でKFと反応させると,コバルト(Ⅲ)錯体では珍しい常磁性のK3[CoF6]が得られる。
執筆者:近藤 幸夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報