日本大百科全書(ニッポニカ) 「水酸化コバルト」の意味・わかりやすい解説
水酸化コバルト
すいさんかこばると
cobalt hydroxide
コバルトの水酸化物。正式にこの名称でよべるのは酸化数Ⅱの化合物だけである。コバルト(Ⅱ)塩の水溶液にアルカリ金属水酸化物を加えると、条件しだいで青色または淡紅色の沈殿として生成する。青色形のほうが不安定で、その懸濁液を放置または加熱すると淡紅色形に変わる。水に不溶であるが、両性であって酸にもアルカリにも溶ける。アルカリ溶液中では[Co(OH)4]2-イオンを生じ青色を呈する。コバルト(Ⅱ)水酸化物(とくに青色形)は酸化を受けやすく、空気中でも徐々に酸素を吸収して褐色の物質に変わる。懸濁液に水酸化アルカリと酸化剤を作用させると急速に進行する。この生成物は通常水酸化コバルト(Ⅲ)とよばれるが、Co2O3・nH2Oと表すべきもので、水の含有量は一定しない。150℃で乾燥すると一水和物が得られるが、これは組成がCoO(OH)のコバルト(Ⅲ)化合物である。
[鳥居泰男]