日本大百科全書(ニッポニカ) 「酸化コバルト」の意味・わかりやすい解説
酸化コバルト
さんかこばると
cobalt oxide
(1)酸化コバルト(Ⅱ) 一酸化コバルトともいう。製法によって黄・褐・黒・灰緑色などの違いがあり、比重にもある程度の幅がある。炭酸コバルトを空気を断って加熱すると、理想的組成に近い淡灰緑色の結晶が得られる。塩化ナトリウム型構造で、室温で反強磁性体である。空気中で安定であるが、酸に溶ける。
(2)酸化二コバルト(Ⅲ)コバルト(Ⅱ) 化学式Co3O4、式量240.8。四酸化三コバルトともいう。酸化コバルト(Ⅱ)を酸素中427℃に熱すると得られる立方晶系の黒色の結晶。正スピネル構造をとるが、自発磁化をもたない。水には不溶だが酸には徐々に溶ける。950℃以上に熱すると酸化コバルト(Ⅱ)になる。なお、酸化コバルト(Ⅲ)Co2O3の組成に相当する化合物の存在は確認されていない。
[鳥居泰男]