アメリカの作家サリンジャーの長編小説。1961年刊。1955年発表の「フラニー」と57年発表の「ゾーイ」を1冊にまとめたもの。「フラニー」はグラース家の末娘フラニーと恋人の大学生レインのデートを描いている。フラニーは恋人の似非(えせ)学者ぶりに辟易(へきえき)しながらも、自分は傾倒するイエスの祈りの話をすることで2人のエゴの対立から逃れようとするが、その重圧から失神してしまう。「ゾーイ」では、フラニーが兄ゾーイの助言によって前の物語で受けた打撃から立ち直るまでが描かれる。「大工よ、屋根の梁(はり)を上げよ」(1955)、「シーモア――序章」(1959)、「ハプワース16 1924」(1965)とあわせて「グラース・サガ」と通称される。
[田中啓史]
『野崎孝訳『フラニーとゾーイー』(新潮文庫)』