改訂新版 世界大百科事典 の解説
フレキシブル生産システム (フレキシブルせいさんシステム)
flexible manufacturing system
略称FMS。フレキシブル・マニュファクチャリング・システムともいう。機械生産の中で大量生産部品の機械加工は早くから自動工作機械,トランスファーマシンの発達によって自動化されていた。しかし機械生産の大部分(約75%)は1回の同一部品加工数,ロットサイズが500個以下で,このような多品種小量生産の機械加工をどのように自動化するかが課題であった。それが1950年代になって数値制御工作機械が普及し,制御テープのかけ替えだけで異形状部品の自動加工が可能になり,1960年代の初頭には中央計算機によって数台から数十台の数値制御工作機械を集中制御する工作機械の群管理システム,DNCシステムdirect numerical systemが実現してますます自動化のレベルがあがり,1960年代後半にはそのシステムに加工部品の自動搬送装置がつけられ,これがFlexible manufacturing systemの商品名で市場に出たのがフレキシブル生産システムの始まりである。1970年代には産業ロボットのまわりに3~4台の数値制御工作機械を配置した小規模のセル型のフレキシブル生産システムが実現し経済性がさらに高まり,またシステムに加工状態と機械の運転状態とを監視する機能を付与して,システムの夜間無人運転が可能となり,1980年代になり大規模の夜間無人運転の可能なフレキシブル生産システムが多数設置され,多品種の類似部品加工の自動化に大きな効果をあげた。
システムの構成
フレキシブル生産システムは数台から数十台の数値制御工作機械,加工部品を取り付けた治具(パレット)の自動搬送装置,加工部品の取り付け取りはずしステーション,中央計算機,これらの間の情報伝達を行うバスラインからなる。このほかに切削工具の自動搬送装置,パレットや素材の収納自動倉庫,素材のパレットへの自動装着装置,切削工具の取り付け室が接続している場合もある。
システムの効果
フレキシブル生産システムはとくに夜間無人あるいは少人数で運転する場合には汎用の工作機械に比べ機械の稼働率は5倍以上高くなり,機械台数,工場面積,直接作業者の数を大幅に減少することができ,また生産に必要な時間(リードタイム)も数分の一に短縮し,工場運営のフレキシビリティも増大する。
今後の課題
フレキシブル生産システムは今後多品種小量生産だけでなく,中品種中量生産の機械加工の分野にも普及し,また産業用ロボット,他の数値制御生産機械の発展によって,切削加工以外の板金加工,溶接,塗装などの分野でも同じような考え方のシステムを実現していかなければならない。そして生産の前段階である設計,生産準備を計算機利用により自動化するCAD/CAMシステムcomputer aided design and computer aided manufacturing systemと結合した計算機統合生産システムcomputer integrated manufacturing(CIM)へと向かっていく。
執筆者:佐田 登志夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報