computer aided designの略。計算機支援設計と訳され,設計者が設計用の道具としてコンピューターを利用して行う設計をいう。CADでは,設計を行う主体は人間であり,コンピューターは単に,設計者の行う設計作業を援助し能率化するための道具として使われる。これに対して,設計方法が明確に記述できるような限られた対象については,コンピューターによる自動設計が可能である。これは,DA(design automationの略)と呼ばれ,CADとは区別されている。一方,製造工程でのコンピューターの利用も考えられ,これは,CAM(computer aided manufacturingの略)と呼ばれている。
一般的な設計の過程を図に示す。設計過程では,要求仕様に対して,既存の技術や知識を活用し,対象製品のイメージを明確化し具体化していく試行錯誤による作業が行われる。作業の対象は,設計対象物のモデルであり,このモデルの完成によって設計が完了する。このモデルは,通常図面や模型あるいは設計ドキュメントによって表現され,したがって設計の実際作業としては,製図や模型製作,ドキュメント作成などの作業が大きな割合を占めることになる。
CADの歴史は比較的新しく,研究は1960年代の初期から始まっているが,本格的な実用期を迎えたのは70年代の後半に入ってからである。このCADの実用化は,コンピューターグラフィックス技術の発達によってもたらされたものであるといってよい。その理由は,設計で扱われるデータは図形データが中心になっており,図形によるマン・マシンの情報交換が行えることや,図形データを高速に処理できることが,設計においてコンピューターを効率よく利用できるための必須の要件であるためである。
現状のCADは,図に示した設計過程の全体を機械化できるまでには至っておらず,コンピューターの用途は大きく次の二つに限定されている。すなわち,一つは,製図の自動化であり,他の一つは,モデルの特性を解析したり性能を評価したりするためのシミュレーションである。CADの次の発展ステップは,明らかに,設計の全過程でのコンピューター利用を可能にすることであり,また,コンピューターによる設計データの一元管理,一元処理を実現することである。そのためには,次の二つの課題について研究開発を進めることが必要とされる。一つは,設計対象物のモデルの構築を含めて設計の全プロセスをそのままコンピューター上にシミュレートするようなシステムを実現して設計データの一元処理を可能にすることであり,他の一つは,設計で必要となる各種の技術データを一元管理できるいわゆるエンジニアリング・データベースを実現することである。このような考え方に基づくシステムは,CAE(computer aided engineeringの略)と呼ばれ,現在,その実現を目ざした研究開発が盛んである。
執筆者:三浦 武雄
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(池上甲一 近畿大学農学部教授 / 2007年)
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…CAD(Computer Aided Designの略)は,計算機支援設計と訳され,設計者が設計用の道具としてコンピューターを利用して行う設計をいう。CADでは,設計を行う主体は人間であり,コンピューターは単に,設計者の行う設計作業を援助し能率化するための道具として使われる。…
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