フンバエ(その他表記)dung fly

翻訳|dung fly

改訂新版 世界大百科事典 「フンバエ」の意味・わかりやすい解説

フンバエ (糞蠅)
dung fly

双翅目フンバエ科Scatophagidaeに属する昆虫総称成虫は,春から初夏にかけて出現するものが多い。代表的な種ヒメフンバエScatophaga stercorariaは,牧場などで家畜の糞の上でふつうに見られる。フンバエの名はそれに由来したものである。ハナバエ科やイエバエ科近縁で,北半球の温帯から寒帯にかけて広く分布する。新北区,旧北区ともに約150種の記録があるが,日本ではほとんど研究されていない。成虫はおもに捕食性で,糞の上に静止していて,糞から発生するツヤホソバエやハヤトビバエなどの小型の双翅目昆虫などをとらえて体液を吸う。幼虫は,糞や植物質を食べる。ハモグリバエと同じく,幼虫が潜葉性の種も知られている。ギボシフンバエモドキは,山地性の種でギボシ類の葉に潜入して食べる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フンバエ」の意味・わかりやすい解説

フンバエ
ふんばえ / 糞蠅
dung fly

昆虫綱双翅(そうし)目環縫(かんほう)亜目フンバエ科Scathophagidaeの昆虫の総称。体は細長く、5、6節よりなる管状の腹部と、比較的細長い脚(あし)が特徴。体色は黄褐色黒色のものが多く、黒や黄色の剛毛や長毛を密生する。はねは前縁脈剛毛を欠き、透明であるが全体に黄色を帯びる。胸部鱗弁(りんべん)は未発達のため、有弁翅蠅(ばえ)類のうちでも原始的なハエと考えられる。ヒメフンバエScathophaga stercorariaは日本でもっとも普通のフンバエで、ウシ、ブタなど家畜の糞(ふん)や堆肥(たいひ)に発生し、成虫も同じ場所に集まる。成虫はしかし捕食性で、小さな昆虫をとらえて体液を吸う。南日本の暖地にはキアシフンバエScathomyza mellipesが産し、日本アルプスなど高山にはクモマヒメフンバエScathophaga furcataがみられる。このほかに植物の茎や葉に幼虫が潜って発育するキボウシモグリフンバエParalleloma hostaeなどが日本に産する。

倉橋 弘]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フンバエ」の意味・わかりやすい解説

フンバエ
Scathophagidae; dung fly

双翅目フンバエ科に属する昆虫の総称。体長 10mmほどの黄褐色ないし黒色のハエで,普通種は家畜の糞や堆肥に多くみられる。体は細めで,腹部は5~6節より成り,肢は細長く剛毛を多くもつ。翅は全体に黄褐色を帯び,前縁脈に剛毛をもたない。翅基部の胸部鱗弁が未発達で,有弁翅をもつハエのなかでは原始的。成虫は他の小昆虫を捕食し体液を吸う。ヒメフンバエ Scathophaga stercorariaは世界中に分布する最も普通の種で,早春,堆肥をまいた畑などに多い。このほか,高山にすむクモマヒメフンバエ S.furcataや植物の茎や葉にもぐる特殊な種も知られている。

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