ブドウネアブラムシ(その他表記)Viteus vitifolii

改訂新版 世界大百科事典 「ブドウネアブラムシ」の意味・わかりやすい解説

ブドウネアブラムシ
Viteus vitifolii

一名ブドウフィロキセラ。半翅目フィロキセラ科の昆虫体長約1mm,黄褐色を呈し,通常無翅。ブドウの生育を著しく阻害するため,世界各地のブドウ栽培における大害虫として著名であったが,この虫に対する抵抗性の強い接ぎ木用台木の導入が成功して,現在では往時のような大被害の発生はあまり見られなくなった。この種には葉に寄生する型と根に寄生する型があって,前者は葉の裏に向かって膨れる小さな囊状の虫癭(ちゆうえい)の中にすみ後者は根に瘤を形成してその表面に群生する。モモアカアブラムシトドノネオオワタムシなどで見られる寄主転換に似た季節的移動が,この種ではブドウの葉と根の間で起きるが,根に寄生する型のみが見られることもある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブドウネアブラムシ」の意味・わかりやすい解説

ブドウネアブラムシ
ぶどうねあぶらむし / 葡萄根蚜虫
[学] Viteus vitifolii

昆虫綱半翅(はんし)目同翅亜目ネアブラムシ科Phylloxeridaeの昆虫。有性型、有翅型、根こぶ型、葉こぶ型などいくつかの生活型があり、生活史も複雑である。有性型では、体長約0.5ミリで、幼虫に似た楕円(だえん)形。葉こぶ型は体長約1ミリで、体は卵形で黄色。葉に小さな袋状の虫こぶをつくり、その中で生活し、単為生殖により産卵する。孵化(ふか)した幼虫はよく移動し、新葉に虫こぶをつくるが、一部は根に移り、根こぶ型となる。根こぶ型の成虫は無翅型で、体は卵形で暗黄色。根こぶ上に群生する。有翅型は体が橙黄(とうこう)色で、これが産んだ卵から有性型が現れる。全世界的に分布し、ブドウの害虫として有名である。

[林 正美]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブドウネアブラムシ」の意味・わかりやすい解説

ブドウネアブラムシ
Viteus vitifolii

半翅目同翅亜目ネアブラムシ科。根瘤型,葉瘤型,有翅型,有性型の4型がある。根瘤型は黄色卵形,無翅で,植物の根に瘤 (こぶ) をつくってその表面にすむ。葉瘤型は体長 1mm内外,黄色卵円形で,葉に寄生して袋状の瘤をつくりその中にすむ。有翅型は体が橙黄色,触角が黒褐色で,軟弱な翅を有する。卵からは有性型が生れる。有性型は体長 0.5mm内外の楕円形状である。ブドウの害虫として有名で,全世界に広く分布する。 (→同翅類 , 半翅類 )

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