改訂新版 世界大百科事典 「ブラッサンス」の意味・わかりやすい解説
ブラッサンス
Georges Brassens
生没年:1921-81
フランスのシャンソン歌手,詩人,作曲家。南フランスのセートに生まれ,1939年,パリに出てルノーの工場で働きながら詩作を始める。42年,処女詩集《軽率に》を発表。第2次大戦中は強制労働に取られてベルリンで過ごし,戦後アナーキスト・グループに加わって活動しつつ詩作と作曲を続ける。52年,歌手のパタシューがモンマルトルに開いていた店でデビューし,翌53年,レコード初録音。54年,《雨傘》ほかの録音でACCディスク大賞を受賞した。人気と評価の両面で,戦後シャンソン界の最高位に位置づけられる詩人歌手である。ギターを片手に飾りけなく歌う彼の歌は,声と芸が中心だったそれまでのシャンソンの流れを変えた。ブルジョア社会の偽善と頽廃をつくその作品に,当初は放送禁止処分で応じた保守的権威も,67年にはアカデミー・フランセーズの詩部門大賞を授与せざるをえなかった。ビヨン,ラブレー,デュ・ベレーの伝統を受け継ぐゴーロア精神の代表的芸術家であり,彼の残した創作アルバム12枚は,あらゆるACI(アーセーイー)(フランスのシンガー・ソングライター)が目標とすべき至宝とされている。
執筆者:蒲田 耕二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報