改訂新版 世界大百科事典 「ブリハットサンヒター」の意味・わかりやすい解説
ブリハット・サンヒター
Bṛhat-saṃhitā
6世紀インドの博学の占星家バラーハミヒラが著した107章からなる占いの書。占いの三大分野の一つ〈サンヒター〉に属するから,本来の目的は前兆について論ずることであるが,天象のみならず,気象,天変地異,動物,植物,鉱物および人間を含む自然界のあらゆる現象を前兆として扱い,政治,軍事,経済など社会的な営みと,衣服,食物,住居,祭事,旅行,結婚などあらゆる個人的営みとが占われるべき対象になっている。そこで天文学,占星術,医学,文法学,韻律学,祭式学などインドの伝統的な学問に対する彼の知識が遺憾なく発揮され,まさにインド古代文化を集成した百科全書ともいうべき側面をもっている。この種の文献として最も古い《ガルガ・サンヒターGarga-saṃhitā》(1世紀ころ?)と多くのテーマが共通しており,そのいくつかはメソポタミア地方で盛んであった前兆占いとの関連が推測されている。
→占星術
執筆者:矢野 道雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報