改訂新版 世界大百科事典 「プラロー」の意味・わかりやすい解説
プラロー
Phra Lo
タイのアユタヤ朝初期の韻文作品。完成年,作者ともに不明。長短不同のラーイ詩(語り)とクローン詩(歌い)660首を組み合わせたリリット詩形式の物語。タイ版《ロミオとジュリエット》といえる。タイ建国前の11世紀ごろ北タイに発生した悲惨な事件の伝承を物語にしたもので,プラロー王と敵国の2人の王女は美男美女の噂に互いに相思相愛となり,3人はひそかに結ばれるが,喜びもつかのま,襲撃されて王,姫,侍従,侍女らが皆勇敢に戦い,壮烈な戦死を遂げる。魔法使いや幽霊も登場し,武勇と忠節をたたえ,仏教的運命観に貫かれている。チュラロンコン王時(1868-1910)に劇化され,ラーマ6世時(1910-25)には歌劇となり,英訳されて《The Magic Lotus》となり,再三映画化された。初めて活字になったのは1902年である。
執筆者:冨田 竹二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報