日本大百科全書(ニッポニカ) 「プレスター・ジョン」の意味・わかりやすい解説
プレスター・ジョン
ぷれすたーじょん
Prester John
ヨーロッパでの伝説上の東方キリスト教国の王。フライジングのオットーの『年代記』(1145)に初出し、イランよりもさらに東方のキリスト教君主で、イランのイスラム勢力を打破すべき者として描かれ、十字軍への協力者であるとの期待が寄せられた。1165年以降、ジョンからのビザンティン皇帝マヌエル1世あて書簡なるものが流布したが、このころにはジョンの国はインドにあったと考えられ、教皇アレクサンデル3世もこの「インド王」に書簡を送った。この伝説の発生因としては、エチオピア王国の存在や、あるいは中央アジア方面のネストリウス派の存在というキリスト教的要素と、イスラム教国に対するカラ・キタイやモンゴルの勝利という軍事的要素とが、ヨーロッパ人の願望のなかで融合したことが考えられる。
[梅津尚志]