イスラーム(その他表記)al-Islām

山川 世界史小辞典 改訂新版 「イスラーム」の解説

イスラーム
al-Islām

原義はアラビア語で身を委ねること,転じて唯一神アッラーへの服従,帰依をさす。7世紀初頭,メッカの商人ムハンマドが神の召命を受けてその布教を開始した。メディナへの彼のヒジュライスラーム暦の元年とされる。聖典コーランは彼が受けた啓示を集めた書である。ムハンマドはユダヤ教・キリスト教的な意味での預言者で,コーランは旧約聖書新約聖書に続く啓典と位置づけられている。ただ,イスラームはユダヤ教,キリスト教に先立つ預言者アブラハムが信奉した一神教を復興,完成させることを目的としている。メディナにおいて信徒ウンマとして成立,発展したイスラームは,狭義の宗教にとどまらず,シャリーアを通じて個人の生活および社会において実践される。信者として信仰し,行うべきことの基本は,六信五行として定式化されている。六信とはアッラー,天使,啓典,預言者,来世,予定説をさす。五行とはシャハーダ,礼拝,断食ザカート巡礼をさす。以上の項目は宗派を問わず共通し,ただ個別的問題について神学・法学上の立場の相違がある。イスラームはスンナ派シーア派に大別されるが,これはもともとは政治的原因によるもので,各派が特定の神学派や法学派によって代表されるのはのちのことである。スンナ派では,アシュアリー派神学を基調とし,四つの法学派が公認されている。

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改訂新版 世界大百科事典 「イスラーム」の意味・わかりやすい解説

イスラーム
Kāzī Nazrūl Islām
生没年:1899-1976

インド,ベンガル地方の詩人イスラム教徒幼時から貧困のうちに過ごした。第1次大戦の折ベンガル連隊に志願,カラチ滞在中,本格的に詩や物語を書き始める。彼を一躍有名にしたのは,帰国後1921年に発表した長編詩《反逆者Bipalabī》で,この詩を含む処女詩集《火のビーナAgnibīṇā》(1922)は,30年代に花開くベンガル現代詩の到来を予兆するものであった。代表的な詩集に《毒の笛Biṣer Bāṅśi》(1924),《平等主義者Sāmyabādī》《チャーヤーナトChāyānaṭ》(ともに1925)等がある。その内容は反逆精神にあふれる愛国詩,人間平等主義に基づく社会思想詩,恋愛抒情詩等に大きく分けられよう。2000曲を超える歌曲の作者としても知られ,ことにウルドゥー語歌曲形式ガザル〉をベンガル歌曲にとりいれた功績は高く評価されている。極度の貧困と家庭の不幸が重なる中で,1942年に発狂,以後没するまで沈黙を守った。
インド文学[ベンガル文学]
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旺文社世界史事典 三訂版 「イスラーム」の解説

イスラーム
Islām

7世紀前半にムハンマドが創始した一神教
イスラームとは,本来「自分のすべてをだれかに委ねること」を意味し,その対象がアッラー(アラビア語で神を意味する)である。ただし,あくまでも自分の力のおよぶかぎりの努力をすることが前提であり,それでも人間の力には限界があるから,最終的にはすべてをアッラーに委ねる,という考え方をとる。政治・経済を含むすべての活動がこの対象であるため,単なる信仰としての宗教と異なる。イスラームの基本は,信仰告白・礼拝・ザガート(義務としての施し。自発的な施しを意味する仏教用語の“喜捨”とは異なる)・斎戒(“断食”はその中の1つ)・巡礼の五行と,その世界観をあらわすアッラー・天使・使徒・啓典・来世・神の予定を信仰する六信である。そしてイスラーム教徒(ムスリム)の生活共同体がウンマ,ムハンマドの口を借りてアッラーの言葉を書き記したものが啓典『クルアーン(コーラン)』である。現在,イスラーム教徒の数は世界で約10億人ともいわれ,増加を続けている。なお,これまでのわが国におけるイスラーム解釈には,ヨーロッパ経由のキリスト教的解釈をもとに,宗教用語としての仏教用語が利用され,誤解されてきた部分が多い。

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