日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
プロジェクト・ファイナンス
ぷろじぇくとふぁいなんす
project finance
特定の事業から得られる物や収益のみを返済原資にあてる資金調達方法。略称PF。事業融資ともよばれる。銀行や商社などが事業計画の調査・立案段階から参加し、収益性や返済能力などを分析し、必要な資金を調達する。石油や石炭などの資源開発、発電所、空港、高速道路などの公共インフラの整備、テーマパークなど総合娯楽・リゾート施設の建設など、長期にわたって多額の資金を必要とする事業に活用されることが多い。
不動産などの担保価値や企業の信用力を裏づけとする通常の融資とは異なり、事業が行き詰まっても、プロジェクトの主体企業は損失を補填(ほてん)する必要はない。事業リスクを主体企業から切り離すため、特定目的会社を通じて資金調達するのが一般的で、プロジェクトの主体企業は債務の膨張を避けながら大型事業に取り組むことができる。資金調達は、多数の金融機関から同一期間、同じ条件で融資を受ける協調融資(シンジケート・ローン)の形態をとるケースが多く、事業リスクは金融機関団が分担することになる。
アメリカに本拠を置く大手情報会社トムソン・ロイターによると、2013年の世界全体のプロジェクト・ファイナンスの組成額は約2040億ドル。金融機関別には、1位は三菱UFJフィナンシャル・グループで、2位はインド・ステート銀行(インド)、3位は国家開発銀行(中国)、4位は三井住友フィナンシャルグループ、5位はみずほフィナンシャルグループで、日本の銀行のシェアが高い。事業内容では、シェールガスなどの資源開発のほか、海水淡水化プロジェクトなどのインフラ整備が増えている。
[編集部]