日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘックマン」の意味・わかりやすい解説
ヘックマン
へっくまん
James Joseph Heckman
(1944― )
アメリカの計量経済学者。シカゴ生まれ。コロラド大学で数学を学び、1971年にプリンストン大学で博士号を取得。コロンビア大学を経て、1977年にシカゴ大学教授。この間、全米経済調査研究所(NBER)のメンバーも務めた。1983年に若手経済学者の登竜門であるジョン・ベーツ・クラーク賞を受賞。2000年には、「ミクロ計量経済学の分野で、新たなサンプル選択の理論と手法を開発した」として、D・L・マクファデンとともにノーベル経済学賞を受賞した。
経済分析は集計化されたマクロ統計を用いるマクロ計量経済学が主流だったが、ヘックマンは1970年代から、個人、家計などのミクロデータを、確率理論を駆使して適切に選択することで、精度を落とすことなく、社会現象を実証的に読み解くミクロ計量経済学の分析手法を確立した。このミクロ経済学的視点からの定性的意思決定モデルは、雇用市場や消費者行動などの分野で利用され、ミクロデータを駆使して解明が進められていった。また教育と賃金に関する相関モデルを提唱したことでも知られる。
[金子邦彦]