日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘマチン」の意味・わかりやすい解説
ヘマチン
へまちん
hematin
ヘモグロビンの鉄イオンにヒドロキシ基-OHが1個結合したポルフィリンの三価鉄錯体の慣用名で、プロトヘマチンprotohematin、すなわち、フェリプロトポルフィリンⅨヒドロキシドferriprotoporphyrin Ⅸ hydroxide、フェリヘムヒドロキシドferrihem hydroxideをさす。ヘミンをアルカリに溶解するとヘマチンになる。ヘマチンはメトヘモグロビンの補欠分子族(補欠分子団)で、グロビンに混合すると定量的にメトヘモグロビンが再構成される。
赤血球のヘモグロビンを酸で処理すると、タンパク質であるグロビンが変性して色素部分のヘムがヘミンとして分離するが、これをアルカリ処理すればヘマチンが得られる。また、ヘムは酸素によって容易にヘマチンに酸化され、亜ニチオン酸ナトリウムで還元すればヘムとなる。ヘマチンがグロビンと結合すればメトヘモグロビンとなるが、グロビン以外の窒素化合物と結合したものはパラヘマチンとよばれる。ヘマチンは生体内ではホスゲンガス中毒や悪性貧血でみられ、また肝性ポルフィリン症の治療に用いられている。
[有馬暉勝・有馬太郎・竹内多美代]