ヘーリング=ブロイエル反射(読み)ヘーリングブロイエルはんしゃ(その他表記)Hering-Breuer reflex

改訂新版 世界大百科事典 の解説

ヘーリング=ブロイエル反射 (ヘーリングブロイエルはんしゃ)
Hering-Breuer reflex

迷走神経呼吸反射ともいう。呼吸調節機構の一つ。1868年K.E.K.ヘーリングとブロイアーJosef Breuer(1842-1925)が報告したため,この名がある。呼吸は吸息と呼息のリズムから成り立つが,そのリズムは中枢神経によって調節されているほか,末梢からの求心性情報によって影響を受ける。たとえば,吸息によって肺が拡張されると,肺の伸展受容器が刺激され,その受容器からの求心性情報は迷走神経を通って脳幹にある吸息中枢を抑制し,その結果,吸息筋を支配する吸息性神経活動を抑制し,反射的に吸息を呼息に切り替える。これをinflation reflexと呼ぶ。逆に,呼息によって肺が強く縮小すると,脳幹の吸息中枢の抑制が弱まり,呼吸は吸息に切り替わる。これをdeflation reflexと呼ぶ。

 この二つの反射を合わせてヘーリング=ブロイエル反射と呼ぶ。この反射によって呼吸の頻度と深さは適正に保たれているが,これは肺の過度の伸展を防ぐのにも役立っているので,これを呼吸運動の自家調節ともいう。
呼吸 →呼吸中枢
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

ヘーリング=ブロイエル反射
ヘーリング=ブロイエルはんしゃ
Hering-Breuer's reflex

肺迷走神経呼吸反射ともいう。肺の拡張によって延髄の吸息中枢が抑制される反射。肺には伸張受容器があって,肺が拡張するとそれが興奮して延髄にインパルスを送り,肺が縮小するとインパルスが止む。 E.ヘーリングらは,この機構によって呼吸のリズムが形成されると考えた。この反射の求心性インパルスは迷走神経を通って上行するので,左右の迷走神経を切断すると,呼吸のリズムは遅く,深くなるが,呼吸が完全に停止してしまうことはない。

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世界大百科事典(旧版)内のヘーリング=ブロイエル反射の言及

【咳】より

…すなわち,気道刺激によって,まず気管支筋の収縮がおこり,これによってさらに二次的に受容器が刺激され,それによって咳がひきおこされるという考え方である。咳は一つ出るとつぎつぎと続くことがあり,この場合は肺の伸展受容器stretch receptorによるヘーリング=ブロイエル反射も関与する。吸う息が深く,急速であるほど,伸展受容器の興奮は大きく,強い呼気すなわち強い咳をひきおこす。…

※「ヘーリング=ブロイエル反射」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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