改訂新版 世界大百科事典 「ベタートン」の意味・わかりやすい解説
ベタートン
Thomas Betterton
生没年:1635-1710
イギリスの俳優。演出家,劇場支配人としても活躍し,王政復古期の劇壇を代表する人物となる。俳優としては悲劇と喜劇の両方に秀で,ハムレットからフォールスタッフに至るシェークスピア劇の多くの人物を演じる一方,W.コングリーブの《愛には愛を》のような洗練された風習喜劇や,J.ドライデンの諸作のような修辞に富む文体の英雄悲劇にも才能を発揮した。シェークスピア劇をはじめとするエリザベス朝戯曲を当時の舞台機構や観客の趣味に合わせて改作したことでも知られる。妻メアリー・ソーンダーソンMary Saunderson(?-1712)はイギリス最初の職業女優の一人で,夫とともにシェークスピア劇などに出演し,高い評価を得た。
執筆者:喜志 哲雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報