日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペトロフ・ウォトキン」の意味・わかりやすい解説
ペトロフ・ウォトキン
ぺとろふうぉときん
Кузьма Сергеевич Петров‐Водкин/Kuz'ma Sergeevich Petrov-Vodkin
(1878―1939)
ロシアの画家。サラトフ県下に生まれる。モスクワの絵画・彫刻・建築専門学校でセローフ、コロービンのもとで学んだのち、ミュンヘン、パリへ留学した。一時フランスのピュビス・ド・シャバンヌやロシアのボリソフ・ムサートフの影響を受け、絵画におけるシンボリズムを追究したが、やがてルネサンス初期やロシア・イコンの美的世界にひかれていった。モニュメンタルな大作では明瞭(めいりょう)な輪郭、よどみないリズム、流れるような線を特色としており、とくに油彩の大作はフレスコに似ている。ロシア・イコンの構図を現代絵画に取り入れた作品では、題材が戦闘などの場面でも、静かな叙情が感じられる。代表作に『赤い馬の水浴』(1912)、『1918年ペトログラード』(1920、以上モスクワ、トレチャコフ美術館)、『コミサールの死』(1928)、『アンナ・アフマートワ』(1922、以上サンクト・ペテルブルグ、ロシア美術館)などがある。
[木村 浩]