日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホルビッツ」の意味・わかりやすい解説
ホルビッツ
ほるびっつ
Howard Robert Horvitz
(1947― )
アメリカの生物学者。イリノイ州シカゴに生まれる。マサチューセッツ工科大学で経営学、数学を専攻、1974年にハーバード大学で生物学の博士号を取得。1978年マサチューセッツ工科大学助教授、1986年同大学教授。1988年より同大学ハワードヒューズ医学研究所に移る。イギリスにて、S・ブレンナー、J・サルストンらとともに、線虫C. エレガンス(C. elegans)を用いて、卵から成体までの、すべての細胞の運命の決定に関する研究に携わった。この研究で、線虫の発生の過程では細胞分裂により増えた細胞の多くが、規則正しく死んでいくことを明らかにした。さらに、発生過程における細胞死(アポトーシス)が、遺伝子に組み込まれた特定のタンパク質により支配されていること、細胞死を支配する遺伝子が線虫だけでなくヒトを含む生物全般に共通して存在することを明らかにした。この発見により、これまで受動的におきると考えられていた細胞死の多くが、遺伝子に組み込まれたメカニズムにより能動的に引き起こされていることがわかり、がんや神経変性疾患などの病気における細胞死の分子機構の解明に大きく貢献した。この業績に対し、ブレンナー、サルストンとともに2002年のノーベル医学生理学賞を受賞した。
[馬場錬成]