日本大百科全書(ニッポニカ) 「サルストン」の意味・わかりやすい解説
サルストン
さるすとん
John E. Sulston
(1942―2018)
イギリスの分子生物学者。ケンブリッジ大学で有機化学を専攻し、リースColin Reeseに師事してオリゴヌクレオチド合成について研究し、1966年に博士号を取得。ソーク研究所に移り原子化学の研究を行った後、1969年より医学研究会議(MRC:Medical Research Council)分子生物学研究所のS・ブレンナーの研究グループに加わり、R・ホルビッツらとともに線虫C.エレガンス(C. elegans)が卵から成体に発生するまでの間のすべての細胞の同定を行い、発生の過程で死ぬことを運命づけられた細胞が存在すること(アポトーシス)をみいだした。この業績により、ブレンナー、ホルビッツとともに2002年のノーベル医学生理学賞を受賞した。また、アメリカのワシントン大学のウォーターストンRobert Waterston(1943― )らとの共同研究により線虫の全ゲノム配列の解読に挑戦し、1998年に世界で初めて動物ゲノムの解読に成功した。さらにイギリスの医学研究公益信託「ウェルカム・トラスト」の支援により、ゲノム研究を目的とするサンガー研究所が1992年に設立され、その所長に就任、ヒトゲノム解読にも大きく貢献した。
[馬場錬成 2018年3月19日]