アポトーシス(読み)あぽとーしす(英語表記)apoptosis

翻訳|apoptosis

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アポトーシス」の意味・わかりやすい解説

アポトーシス
あぽとーしす
apoptosis

生物を構成する細胞が自分の役目を終えたり、不要になると、みずから死ぬ(自殺現象細胞死ともいう。アポトーシスそのものは古くから知られていた。胎児にみられる手の水かきが体の成長とともに消えていく過程、両生類の尾の退化などがこれに該当する。アポトーシスは、あらかじめ細胞内の遺伝子にプログラムされているといわれ、癌(がん)、アルツハイマー病エイズ、一部の神経筋肉疾患などの発症に関与すると報告されている。ある種の癌抑制遺伝子を欠いた細胞は、アポトーシスをおこしにくいことから、一部の癌抑制遺伝子はアポトーシス制御機能をもつと判明し、アポトーシス抑制遺伝子の利用に関する研究も発表されている。線虫を用いた研究でアポトーシスのプログラムが遺伝子に盛り込まれていることを発見したS・ブレンナー、R・ホルビッツ、J・サルストンは2002年、ノーベル医学生理学賞を受賞している。

[飯野和美]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アポトーシス」の意味・わかりやすい解説

アポトーシス
Apoptosis

一部の細胞があらかじめ遺伝子で決められたメカニズムによって,なかば自殺的に脱落死する現象。アポプトーシスともいう。オタマジャクシカエルになるときに尻尾が消失したり,脊椎動物の指の間の水掻きが胚の発生にともないなくなるなどの現象で,プログラムされた細胞死と呼ばれる。体内での器官形成でもアポトーシスの例が多く発見されており,動物の発生過程での重要な原理とされる。正常な発生過程だけでなく,ウイルス感染放射線被曝,薬物投与などでアポトーシスが起きることがわかっており,免疫系の細胞でも重要な役割を果している。

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