ホロノミー(その他表記)holonomy

改訂新版 世界大百科事典 「ホロノミー」の意味・わかりやすい解説

ホロノミー
holonomy

微分可能多様体上で接続を与えるということは,ある意味での,平行性を導入することである。したがって,やや粗雑ではあるが,ごく近い2点ppdpとに対しては,接続によってその一方における接ベクトルを他方へ平行移動することが可能であると考えてよい。そこで,点pと微分可能曲線cで結ばれる点qに対しても,pからqまでを少しずつ移動することによって,点pの接ベクトルを点qのそれにまで平行移動させることが可能になる。とくに曲線c閉曲線であって,pから出発してpに帰ってくる場合を考えると,点pにおける接ベクトルの平行移動は,もう一度,点pにおける接ベクトル空間に戻ってくることになり,したがって,このベクトル空間の中での写像を与えることになる。平行性という名称からも類推されるとおり,この写像は線形であり,かつ逆をもつ。よって,このベクトル空間の線形変換群の一つの元となることができて,結局平行移動は,閉曲線cに線形変換群の元を対応させることになる。そこで,点pから出てpに終わる閉曲線の全体を考え,そのおのおのに対応する線形変換群の元の全体を考えると,これはその部分群Hp)をなしている。Hp)を点pに関する(与えられた接続の)ホロノミー群と呼ぶが,考えている多様体が連結であれば,その中のどの点に関するホロノミー群も同型であることは見やすい。なおここでは,やや一般な接続とそれの定める平行性の場合を取り上げたが,リーマン多様体上のリーマン接続の場合など,この平行性が長さをも保存する場合には,ホロノミー群は,長さをも保つ変換群,すなわち直交群の部分群になる。このようにホロノミー群は,接続のようすを群論的に,ある程度まで反映するものである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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