ホンダワラコケムシ
Zoobotryon pellucidum
フクロコケムシ科の外肛動物。群体が海藻のホンダワラのように大きくなるところからこの名がある。本州中部以南から温帯海域に広く分布し,付着生活をする。群体は付着面から下方に垂れ下がって,大きなものでは1mほどにもなる。淡黄色ないし半透明のキチン質の茎が3分岐しながらのび,茎の周辺全面に個虫を密生し,多いときには3~4列に並ぶ。しかし,個虫は非常に脱落しやすいので,古い枝ではまばらになっている場合が多い。個虫は卵形で,枝の微小突起より生じ,触手は7~8本。秋おそくに群体がばらばらになり,越冬した走根の一部分から新しく走根をのばし,個虫を出芽させながら群体をつくる。真珠養殖の筏(いかだ)や籠に大量に付着して潮通しを悪くしたりして大きな害を与える。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ホンダワラコケムシ
ほんだわらこけむし / 馬尾藻苔虫
[学] Zoobotryon pellucidum
触手動物門苔虫(こけむし)綱櫛口(しっこう)目フクロコケムシ科に属する海産小動物の1種。個虫とよばれる体長1ミリメートル以下の動物体が多数癒着して群体をつくる。個虫は、キチン質でできた袋状の虫室と、その中に収まる軟体部、つまり虫体とからなる。虫体は8本の触手をもつ。個虫はキチン質の細管の上に次々と出芽し、細管は頻繁に3分岐を続け、短期間で高さ数十センチメートルもの巨大群体に成長する。これはコケムシの群体としては世界最大である。船底、筏(いかだ)、漁網などから垂れ下がって成長する淡黄色の群体は、海藻のホンダワラそっくりである。世界各地の温帯に広く分布し、日本では関東地方以南の沿岸で普通にみられ、養殖施設などの汚損生物としてよく知られている。
[馬渡峻輔]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
ホンダワラコケムシ
Zoobotryon pellucidum
触手動物門苔虫綱櫛口目フクロコケムシ科。高さ数十 cmから大きいものでは 1m近くにもなる群体をつくる世界最大のコケムシで,外見がホンダワラに似る。直径 2mmほどの半透明のキチン質の茎が頻繁に枝分れし,卵形の個虫が茎の周辺全面に密生している。個虫は,死ぬと枝から脱落するので,古い枝ではまばらである。おもに船底,筏 (いかだ) ,浮標などに付着して垂れ下がっている。世界各地の暖海に産し,本州中部以南に分布する。
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世界大百科事典(旧版)内のホンダワラコケムシの言及
【コケムシ(苔虫)】より
… 世界で現生種は約4000種知られているが,有用種はまったくなく,すべてのものが有害であるといってよい。フサコケムシBugula neritina,チゴケムシDakaria subovoideaなどは船底について船速を遅くさせたり,冷却水路を狭めるなどの害を与え,またホンダワラコケムシZoobotryon pellucidumやセンナリコケムシBowerbankia imbricataは定置網の水通しを悪くしたり,養殖貝を殺すこともある。ヒラハコケムシMembranipora serrilamellaは有用海藻について品質を低下させ,大きな被害を与えている。…
【コケムシ(苔虫)】より
…体長1mmたらずの個虫が多数集まって樹枝状,盤状,塊状など種々な形の群体をつくり,岩,貝類,海藻などに付着している。ホンダワラコケムシでは全長1mもの大きさになる。大部分は海産で,潮間帯から深海に分布しているが,少数のものは各地の湖沼に産する。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」