イタリアの首都ローマの代表的な公園。教皇パウルス5世の甥(おい)シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿(すうききょう)が17世紀末に建てた邸宅に付随してつくられた広大な庭園。ボルゲーゼ家は13世紀から続くトスカナ地方シエナの名門で、16世紀中葉ローマに居を移した。邸宅は現在、公園内のボルゲーゼ美術館となっており、シピオーネの収集品を中心とするベルニーニ、ラファエッロ、ボッティチェッリ、カラバッジョなどの作品を収蔵し、そのコレクションはバチカン美術館に次ぐ。とくに、ボルゲーゼ家の1人と結婚したナポレオン1世の妹ポリーヌをモデルとする、18世紀、カノーバ作の大理石彫刻は有名。公園北西に国立近代美術館がある。北西奥には教皇ユリウス3世(在位1550~55)の別荘であったビラ・ジュリア美術館(エトルスク美術館ともよばれる)がある。公園西端のピンチョの丘は19世紀初頭ジュゼッペ・バラディエール設計で公園化されたもので、市街の眺望がよく、その名称は6世紀この地に別荘をもっていたピンチ家に由来する。
[藤澤房俊]