改訂新版 世界大百科事典 「ボルゲーゼ美術館」の意味・わかりやすい解説
ボルゲーゼ美術館 (ボルゲーゼびじゅつかん)
Galleria Borghese
ローマにある美術館。名門ボルゲーゼ家の収集に由来するルネサンスとバロックの作品を中心に収蔵する。同家出身の教皇パウルス5世(在位1605-21)と甥のシピオーネScipione枢機卿はともに熱心な美術愛好家で,1613年ローマ市の北のはずれにあるビラ・ボルゲーゼの広大な庭園中に小邸館を建て,一門の収集をここにまとめた。盛期ルネサンスの名作(ラファエロ《キリスト哀悼》,ティツィアーノ《聖愛と俗愛》)を中心に,シピオーネ庇護下の同時代の芸術家の作品(カラバッジョ《ゴリアテの首を持つダビデ》,ベルニーニ《アポロンとダフネ》)をも含む収集は,17世紀末までに古代美術をも加えてさらに豊かになった。18世紀には傑作の多くが市内のパラッツォ・ボルゲーゼに移される。1774年には新古典主義様式で小邸館の改修がなされるが,フランス革命期の当主カミロ・ボルゲーゼは古代美術品のルーブル美術館への譲渡を余儀なくされ,ラファエロの《騎士の夢》《三美神》等を手放した。ただしコレッジョの《ダナエ》がこの時期に購入され,カノーバによる,ナポレオンの妹でカミロの妻パオリーナの彫像も収集に花を添えた。1891年にパラッツォ・ボルゲーゼの作品群が当初の場所に戻り,1902年,庭園と小邸館は国の管理下に移され,前者はローマ市立公園,後者は国立美術館として今日に至る。
執筆者:高橋 裕子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報