ポイス(読み)ぽいす(英語表記)John Cowper Powys

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポイス」の意味・わかりやすい解説

ポイス(John Cowper Powys)
ぽいす
John Cowper Powys
(1872―1963)

イギリス小説家、批評家。作家T・F・ポイス、哲学者、随筆家ルーエリン・ポイス Llewelyn Powys(1884―1939)の長兄。三兄弟とも文筆の才に優れていたことで知られる。ジョンは、ケンブリッジ大学を卒業、本国およびアメリカで巡回講演講師として好評を得る。やがて著述に専念し、小説、詩、批評、伝記、哲学と幅広い分野で活躍した。小説に『ウルフ・ソレント』(1929)、『グラストンベリ物語』(1933)、『オウエン・グレンダウアー』(1940)など、評論に『文化の意義』(1929)、『文学のたのしみ』(1938)など。熾烈(しれつ)な想像力の作家で、宇宙の万物すべてを生命をもつとみなし、人間存在を宇宙の第一原因から発する巨大な力の影響のもとにとらえている。神秘主義を基盤とし、神話や魔術的なものをリアリズムと結び付け、人間存在の根源に迫る独自の直観を示した。

[小松原茂雄]


ポイス(Theodore Francis Powys)
ぽいす
Theodore Francis Powys
(1875―1953)

イギリスの小説家。作家ジョン・ポイスの弟。ドーセットシャーに住み、同地方の農村生活に材をとる。彼の小説は、田舎(いなか)の生活をごく素朴に物語るようでいて、実は「善と悪」、「愛と死」など、人生の根本問題についての哲学的、宗教的洞察を込めた「寓話(ぐうわ)」または「神話」にほかならない。代表作は『ウェストン氏のおいしい葡萄(ぶどう)酒』(1927)。ほかに短編集『左足』(1923)など。

[小松原茂雄]

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