日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポリアーキー」の意味・わかりやすい解説
ポリアーキー
ぽりあーきー
polyarchy
政府に対する公的な異議申立てと、広範な政治参加がともに可能で、民主主義体制にもっとも近い政治体制をポリアーキーと称する。この概念は、アメリカの政治学者ロバート・A・ダールが提唱した理論上の概念で、政治学で広範に用いられるようになった。ダールは、政府が市民の要求に、政治的に公平に責任をもってこたえることが民主主義の特性であるととらえ、そのためには、(1)要求を形成する機会、(2)個人的・集団的行為によって市民や政府に要求を表現する機会、(3)政府の行為において要求を平等に扱わせる機会、を制度的に保障することが不可欠であると考えた。さらにまた、公的な異議申立てと広範な政治参加という二つの次元から各政治体制の民主化度が測定されるとも考えた。ポリアーキーは、民主化度がもっとも高い政治体制であり、その対極には、公的な異議申立ても政治参加の範囲も低い閉鎖的抑圧体制が位置する。
[谷藤悦史]
『R・A・ダール著、高畠通敏・前田脩訳『ポリアーキー』(岩波文庫)』