日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダール」の意味・わかりやすい解説
ダール
だーる
Robert Alan Dahl
(1915―2014)
現代政治学を代表するアメリカの学者。その関心領域はきわめて広く、ほぼ政治学の全領域に及んでいる。とりわけ、アメリカ民主主義の前提である、地方政治は草の根民主主義だとする命題に対して、地域権力構造は多元的な集団によって支えられ、それぞれの集団が限定的な範囲と程度で権力を分有している実態を立証した。この権力のもち方に対する関心は、現代民主主義の理論化への関心として展開され、分析概念としての議会民主政を現代化し、ポリアーキー(多頭政)概念によって、現代の政治体制の開放性(異議申立て)と包絡性(参加)を軸とする包括的な分析的理解の手掛りを展開した。ウッドロー・ウィルソン賞(1962)、タルコット・パーソンズ賞(1977)などの賞を受賞した。
[内山秀夫]
『R・A・ダール著、内山秀夫訳『民主主義理論の基礎』(1970・未来社)』▽『R・A・ダール、E・R・タフトィ著、内山秀夫訳『規模とデモクラシー』(1979・慶応義塾大学出版会)』▽『R・A・ダール著、内山秀夫訳『経済デモクラシー序説』(1988・三嶺書房)』▽『R・A・ダール著、河村望・高橋和宏監訳『統治するのはだれか――アメリカの一都市における民主主義と権力』(1988・行人社)』▽『R・A・ダール著、中村孝文訳『デモクラシーとは何か』(2001・岩波書店)』▽『R・A・ダール著、飯田文雄・辻康夫・早川誠訳『政治的平等とは何か』(2009・法政大学出版局)』▽『R・A・ダール著、杉田敦訳『アメリカ憲法は民主的か』(2014・岩波書店)』▽『R・A・ダール著、高畠通敏・前田脩訳『ポリアーキー』(岩波文庫)』