日本大百科全書(ニッポニカ) 「政治体制」の意味・わかりやすい解説
政治体制
せいじたいせい
political regime
ある政治原理に基づいて支配・服従関係が編成されている状態をいう。もともと、体制とは、ある原理によって統一され、秩序づけられている状態をさすので、それぞれの体制を区別する特性を形容詞とするいろいろな体制分類が可能となる。たとえば、その特性が政治家である場合、スターリン体制とかゴルバチョフ体制といえるし、またその特性がイデオロギーである場合、自由主義体制とかファシズム体制ということができよう。
第二次世界大戦後、世界を二分する政治体制は、アメリカを盟主とする西側の民主主義体制と、ソ連を盟主とする東側の全体主義体制である、と西側の学者はいってきた。この区別は、支配態様を加味した政治原理による分類であるが、両体制の違いはそのほかに社会経済システムの違いにも由来するところが大きいので、この後者の違いを強調して、西側の体制は資本主義政治体制、東側のそれは社会主義政治体制といわれる場合もあった。この場合の政治体制概念は、ある社会経済システムを土台にしてそれに適合的な政治原理によって支配・服従関係が編成されている状態を意味するので、それは広義の概念の政治体制といえよう。これは、システム論普及以前の英語のpolitical systemつまり「政治体制」概念に近い。通常、体制変革とか体制内改革とか、あるいは体制間の平和共存とか両体制の収斂(しゅうれん)という場合の体制概念はこの広義の政治体制にあたる。
現代アメリカ政治学の政治体系論では、政治体制概念はシステム論によって解釈し直されている。D・イーストンは、政治体系を構成する基本的要素として、政治社会political community、体制、権威の三つをあげ、それらは政治体系に対する支持の調達をその目的とするとして、そのなかの体制については、それが政治体系の実現する諸価値や遵守すべき規範によって編成された行為構造である、と規定している。彼はその例としてドイツを取り上げ、国民国家統一から第二次世界大戦の敗北までのドイツの政治社会は同一であっても、体制は帝政から共和政を経てナチスの一党独裁政へと変化したと説明。この説明から推して、彼の体制概念は、君主政、貴族政、民主政などの国家の政治形態を意味する「政体」に近い。
[安 世舟]