日本大百科全書(ニッポニカ) 「マグレブ」の意味・わかりやすい解説
マグレブ
まぐれぶ
Maghreb
アフリカ北西部のチュニジア、アルジェリア、モロッコの総称。中世には、チュニジアからモロッコまでのアトラス山脈周辺の地中海に沿った地域のみをさしたが、現在では三国全体をいう。広義にはリビア、西サハラ、モーリタニアも加える。マグレブとはアラビア語で「日没の地」、すなわち「西方のアラブ諸国」を意味する。東方のアラブ諸国をマシュレクというのに対することばである。乾燥地域の広いアラブ諸国のなかでは、冬の雨に恵まれた緑の多い地である。ベルベル人が先住民だが、7世紀以降アラブ人が侵入し、アラブ化、イスラム化された。しかし地方によってはベルベル文化が残っており、黒アフリカとも古くから接触していたためアフリカ世界の要素ももつ。また植民地時代にフランスの影響も受け、アラブ世界でも特徴ある地域である。マグレブ諸国には共通点が多く、経済連合やマグレブ連邦など「大マグレブ」構想があるが、まだ実現していない。
[藤井宏志]
『川田順造著『マグレブ紀行』(中公新書)』