日本大百科全書(ニッポニカ) 「マグロウヒル」の意味・わかりやすい解説
マグロウヒル
まぐろうひる
McGraw-Hill Co., Inc.
かつてアメリカにあった出版・情報サービスの大手企業。1917年から2016年まで存在し、1990年代には教育出版分野で世界最大の企業であった。アメリカの三大ビジネス誌の一つ『ビジネス・ウィーク』を刊行し、傘下に格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S & P)、国際調査・コンサルティング機関J・D・パワー、デンバーやサンディエゴなどの4テレビ局を抱えていた。ただインターネットの普及による紙媒体の不振で、出版事業などを売却しながら金融・情報サービス事業にシフトし、2013年にマグロウヒルファイナンシャルに社名を変え、さらに2016年にはS & Pグローバルへ社名を変更した。
教師のジェームズ・マグロウJames Herbert McGraw(1860―1948)が設立した出版社マグロウ(1899年創設)と編集者のジョン・ヒルJohn Alexander Hill(1858―1916)が設立した出版社ヒル(1902年創設)が1909年に事業提携して事実上発足した。1917年に正式に合併。1929年に株式を公開し、週刊ビジネス誌『ビジネス・ウィーク』を創刊した。1950年代以降、教科書などの教育出版分野に進出し、1953年に国際商品市況情報を配信するプラッツを、1966年にはS & Pをそれぞれ買収して金融・情報サービス事業を強化した。日本では1969年(昭和44)から1988年まで日本経済新聞社との合弁会社日経マグロウヒル(現、日経BP)が存在した。1996年にタイムズ・ミラー・ハイアー・エデュケーション・グループを買収して教育出版で世界最大手となった。このほか専門雑誌、ニューズレター、電機、建設、エネルギー、医療・健康などのデータベース、オンライン商品などを提供し、その後はネットの普及によるデジタル媒体の隆盛にあわせ、『ビジネス・ウィーク』の売却(2009)、教育部門の売却(2012)、調査・コンサルタント会社の売却(2016)などを進め、金融・情報サービスを中心とする企業体に事業転換した。
[矢野 武 2017年12月12日]