いろいろな意味で用いられるが,もっとも広義には人為的に記憶する制御可能なデータを指す。制御可能とは,検索,記憶,忘却,内容の変更などを一定の秩序の下に人間が自由に行うことができるという意味で,通常はコンピューターの記憶装置内に蓄えることによりこれが可能となる。企業などで使用するデータベースでは,さらにこのデータが多目的に共有されデータベースとしての特徴を示す。データベースサービス業などで単に組織的に集められた情報のファイルをデータベースという場合もあるが,これらは情報検索の機能だけをとくに強化したものである。典型的なデータベースは多目的共有ファイル群といってよい。この定義からデータベースの多くの性質を説明することができる。
データベースは一人の利用者にだけ利用されるものではなく,おおぜいの利用者によって,利用されるものであるから,蓄積データの意味が提供者だけでなく,利用者にもはっきりと伝わらなくてはならない。蓄積データの1件1件の意味を個別に記述したのでは,データそのものよりもその記述のほうがはるかに大量になってしまうから,同種類の意味のデータをなるべく一つにまとめてファイルとして管理する。いろいろの方式があって一概にはいえないが,通常,ファイルはレコード(1単位として取り扱われる関連した項目の集り)が集まってできたものである。レコードはさらにいくつかのフィールドからなり,各フィールドは例えば氏名,年齢,職業のように蓄えるレコードごとにすべて同じ意味をもつ。レコードはまたデータベースをコンピューターの記憶装置に蓄えたときの出し入れの単位となる。ファイルに蓄えられるレコードの意味はこれらフィールドによって伝えられる。ファイルの定義時には各フィールド名,フィールドの長さ,データの型(文字列か数字かなどの別)などが定められ,以後この約束に合うレコードだけが受け入れられる。ファイルの中の1個1個のレコードをレコード実現値,それらの共通の枠組みをレコード型という。
データベースに蓄えられた事実は,いろいろの見方で眺めることが要請される。これがデータベースの多目的性である。見方はいろいろに異なっても蓄積されている事実と矛盾したことがデータベースから導き出されないように,いろいろの見方は中心に置かれた一つの見方の基礎のうえに定義される。例えば雇用関係がデータベースの中で記述されていたとき,1人の雇用者の立場から見てどのような被雇用者を雇っているかという見方と,1人の被雇用者の立場から見てどのような雇用者に雇われているかという見方を定義することができる。
データベースが実現するデータの共有性は,単に同一のデータを利用者に見せるというだけでなく,どの利用者も資格さえあればそのデータを即座に変更できることも意味する。この機能によって,例えば銀行の預金残高や航空座席の予約状態などをデータベースで実現することができるようになる。
データベースは当初,実用的な技術として理論よりも実践が先行したが,1970年にE.F.コッドが関係データベース(リレーショナルデータベース)の理論を出したころから理論面の研究が盛んになって多くの理論モデルが提案されている。データベースの理論モデルはデータモデルと呼ばれるが,その主目的はいかに対象とする世界を自然に,かつ柔軟に表現するかである。データベースが表現する対象は簡単な事務処理に始まって,徐々にその範囲が複雑なものに広がっている。最近では基礎的な事実のほかに推論のための規則そのものもデータとして蓄積しておき,推論を行おうとする研究も始まっている。データベースの実現手段にいままではすべてコンピューターが使われたが,データベースの本質は人間の思考そのものであり,実現手段が何であるかということとは独立に議論できる種類のものである。
執筆者:穂鷹 良介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
コンピュータのうえで取り扱うデータの構造および処理の記述を抽象化して、データを共有利用できるようなプログラム作成およびデータの保守を容易に行うための基本ソフトウェア。データベース・マネジメント(管理)・システムともいう。コンピュータで取り扱うデータは、独自の構造をもっている。たとえば、社員名簿の場合は事業所・部・課・係などの階層に分けることができる。製品の生産実績処理では、工場・品名・日付・数量などの属性をもったデータの集合を、処理目的に応じて属性別に仕分けすることができる。ところが、これらのデータが、コンピュータの記憶媒体上でどのように配置され、どのように取り扱われるかは、プログラマーの責任とされる。たとえば、磁気ディスク上のどのトラック、セクターにどの課の社員名簿をどのような様式で記録させるかなどである。
われわれ人間の世界におけるデータの様式と、その相互間の関係を、コンピュータの用語では論理(ロジカル)構造とよび、そのデータ群をコンピュータ内部の記憶媒体上にどう割り付けるかを物理(フィジカル)構造とよんでいる。コンピュータによるデータ処理を設計するためには、まずデータの論理構造を決め、そのデータの部分に対する加工の方法とその順序を決め、その構造と加工と順序をコンピュータ上でどのように物理的に具体化するかを決めなくてはならない。このような作業はデータベース・マネジメント・システムが出現する以前は、アセンブラやプログラム言語でプログラムを開発するプログラマーにとって相当な負担であった。また同じ製品データであっても、受注システムで処理する場合と生産計画システムで処理する場合とでは処理内容が異なるため、それぞれの処理に適合した形態のデータを用意する必要があった。
データベース・マネジメント・システムは、データ構造の記述、そのなかから抽出したい部分の記述を抽象化し、統合的なデータを包含することによって一つのデータの蓄積をあらゆる処理で共通に利用することを可能にするために考案された。データの構造はスキーマとよばれ、関係(親子関係、包蔵関係、順序関係など)が明示される。またデータはいろいろな属性をもち、その属性がまた他の構造の中に位置づけられる。プログラマーは、データベース・マネジメント・システムのデータ記述言語によって、要求に応じたデータ構造を記述する。データベースに蓄積されたデータの抽出・加工は、プログラム言語から随時指示できるようになっている。
データベース・マネジメント・システムのもう一つの機能は、コンピュータや通信回線の故障などによる障害からの回復機能をもたせていることである。またデータベースを共用する各システムが同時に実行される場合のデータの保護、更新のタイミングなどの管理をも行う。
データベース・マネジメント・システムとしてはCODACYL(コダシル)委員会で提案したネットワーク型のもの、IBMのIMSのような階層型のものが初期に開発され、1980年代からは関係を中心とする関係データベースが普及した。近年はオブジェクト指向データベースや、これと関係データベースをあわせたオブジェクト関係データベースなどがあり、目的にあわせて選択する必要がある。関係データベースに対しては使いやすい言語であるSQL(Structured Query Language、構造化照会言語)が普及している。
データベース・マネジメント・システムによって、企業におけるデータの統一的な管理が可能となったが、小売商の商品管理や売れすじ商品の発見、クレジットカードの管理など応用範囲は大きく広がっている。
データベースをデータの蓄積そのものを意味する用語として使う場合があるが、データの蓄積はデータバンクともよばれる。ネットワーク上に分散したデータベースをインターネットを介して利用することも可能になっている。
[小野勝章・上林弥彦]
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(星野力 筑波大学名誉教授 / 2007年)
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出典 (株)朝日新聞出版発行「パソコンで困ったときに開く本」パソコンで困ったときに開く本について 情報
それぞれの目的のために利用しやすいように,ある法則にもとづいて集められた大量のデータ.データベースの作成は,以前は個人で行われていたが,現在,そのための研究機関や会社が設立されている.アメリカのCAS(Chemical Abstracts Service)はその一例である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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