データベース(読み)でーたべーす(英語表記)database

翻訳|database

日本大百科全書(ニッポニカ) 「データベース」の意味・わかりやすい解説

データベース
でーたべーす
database

コンピュータのうえで取り扱うデータ構造および処理の記述を抽象化して、データを共有利用できるようなプログラム作成およびデータの保守を容易に行うための基本ソフトウェア。データベースマネジメント管理)・システムともいう。コンピュータで取り扱うデータは、独自の構造をもっている。たとえば、社員名簿の場合は事業所・部・課・係などの階層に分けることができる。製品の生産実績処理では、工場・品名・日付・数量などの属性をもったデータの集合を、処理目的に応じて属性別に仕分けすることができる。ところが、これらのデータが、コンピュータの記憶媒体上でどのように配置され、どのように取り扱われるかは、プログラマーの責任とされる。たとえば、磁気ディスク上のどのトラック、セクターにどの課の社員名簿をどのような様式で記録させるかなどである。

 われわれ人間の世界におけるデータの様式と、その相互間の関係を、コンピュータの用語では論理(ロジカル)構造とよび、そのデータ群をコンピュータ内部の記憶媒体上にどう割り付けるかを物理(フィジカル)構造とよんでいる。コンピュータによるデータ処理を設計するためには、まずデータの論理構造を決め、そのデータの部分に対する加工の方法とその順序を決め、その構造と加工と順序をコンピュータ上でどのように物理的に具体化するかを決めなくてはならない。このような作業はデータベース・マネジメント・システムが出現する以前は、アセンブラプログラム言語でプログラムを開発するプログラマーにとって相当な負担であった。また同じ製品データであっても、受注システムで処理する場合と生産計画システムで処理する場合とでは処理内容が異なるため、それぞれの処理に適合した形態のデータを用意する必要があった。

 データベース・マネジメント・システムは、データ構造の記述、そのなかから抽出したい部分の記述を抽象化し、統合的なデータを包含することによって一つのデータの蓄積をあらゆる処理で共通に利用することを可能にするために考案された。データの構造はスキーマとよばれ、関係(親子関係、包蔵関係、順序関係など)が明示される。またデータはいろいろな属性をもち、その属性がまた他の構造の中に位置づけられる。プログラマーは、データベース・マネジメント・システムのデータ記述言語によって、要求に応じたデータ構造を記述する。データベースに蓄積されたデータの抽出・加工は、プログラム言語から随時指示できるようになっている。

 データベース・マネジメント・システムのもう一つの機能は、コンピュータや通信回線故障などによる障害からの回復機能をもたせていることである。またデータベースを共用する各システムが同時に実行される場合のデータの保護、更新のタイミングなどの管理をも行う。

 データベース・マネジメント・システムとしてはCODACYL(コダシル)委員会で提案したネットワーク型のもの、IBMのIMSのような階層型のものが初期に開発され、1980年代からは関係を中心とする関係データベースが普及した。近年はオブジェクト指向データベースや、これと関係データベースをあわせたオブジェクト関係データベースなどがあり、目的にあわせて選択する必要がある。関係データベースに対しては使いやすい言語であるSQL(Structured Query Language、構造化照会言語)が普及している。

 データベース・マネジメント・システムによって、企業におけるデータの統一的な管理が可能となったが、小売商の商品管理や売れすじ商品の発見、クレジットカードの管理など応用範囲は大きく広がっている。

 データベースをデータの蓄積そのものを意味する用語として使う場合があるが、データの蓄積はデータバンクともよばれる。ネットワーク上に分散したデータベースをインターネットを介して利用することも可能になっている。

[小野勝章・上林弥彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「データベース」の意味・わかりやすい解説

データベース
data base

データ構造が明確な大量のデータが維持・管理され,目的に応じて活用されるようになっている一群のデータをいう。コンピュータに入っていることや,コンピュータのファイル構成などには関係なくいうもので,汎用性のあるものである。たとえば,人名簿,住所録,政治・経済に関する新聞記事,各種経済データ,専門用語の辞書,技術設計データ,物理・化学の各種定数表などを活用しやすい形に整理し,コンピュータに記憶させたものがあり,今後ますますその範囲は広がっていくであろう。

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