マツノザイセンチュウ(読み)まつのざいせんちゅう(その他表記)pine wood nematode

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マツノザイセンチュウ」の意味・わかりやすい解説

マツノザイセンチュウ
まつのざいせんちゅう / 松材線虫
pine wood nematode
[学] Bursaphelenchus xylophilus

袋形(たいけい)動物門線虫綱チレンクス目Tylenchidaに属する植物寄生線虫。体長約1ミリメートル。各地にみられるマツ類枯損の原因のほとんどは本種とマツノマダラカミキリマダラヒゲナガカミキリともいう)の相利共生の結果である。線虫は1匹のカミキリ成虫気管内に何万と侵入し、カミキリがマツの枝をかじると、その傷跡から線虫が樹体内に侵入繁殖し、木全体に広がる。このためマツは萎凋(いちょう)(しおれ)をおこし、松脂(まつやに)の滲出(しんしゅつ)が止まり数週間で枯死する。カミキリはこのような木の幹に産卵する。翌春マツの材中でカミキリが蛹(さなぎ)から羽化すると、線虫はカミキリの気門から気管内に侵入する。

[野淵 輝]

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改訂新版 世界大百科事典 「マツノザイセンチュウ」の意味・わかりやすい解説

マツノザイセンチュウ (松材線虫)
pine wood nematode
Bursaphelenchus xylophilus

アフェレンコイデス科のセンチュウマツクイムシの被害といわれるマツの枯損はこれによって起こる。5~7月ころ,耐久型幼虫がマツノマダラカミキリによって運ばれ,その食害傷からマツの若枝に侵入し,樹脂道内に定着する。その作用でマツが発病したあとセンチュウは旺盛に増殖し,樹体内いっぱいに広がる。樹脂分泌の停止が初期病徴の一つである。病状の進行は早く,8月下旬には針葉は萎凋(いちよう),黄変し,10月には樹木全体が赤茶色に枯れ上がってしまう。春に先がけて,センチュウはマツノマダラカミキリのさなぎ室周辺に集まり,5~6月ころ,羽化虫体へ気門から侵入する。数万匹のセンチュウを気管に宿した成虫は,枯死したマツから飛び立って,次のマツへとセンチュウを運んでいく。防除するには,媒介昆虫を対象とした薬剤散布やセンチュウを対象とした樹体への薬液注入があるが,被害木を伐採,除去することが基本的にたいせつである。
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百科事典マイペディア 「マツノザイセンチュウ」の意味・わかりやすい解説

マツノザイセンチュウ

マツノマダラカミキリによって媒介されてマツ類を枯らす病原線虫。いわゆるマツクイムシ被害の元凶。マツノマダラカミキリの体内に潜んだマツノザイセンチュウが,カミキリがマツを食害する際にその傷口から材に移り,以後,樹体内に広く分散・増殖する。このためマツが急速に衰弱して枯死するに至る。
→関連項目植物線虫病

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