日本大百科全書(ニッポニカ) 「マリニズモ」の意味・わかりやすい解説
マリニズモ
まりにずも
marinismo
17世紀のイタリアで用いられた詩法。西欧バロック期に一世を風靡(ふうび)したイタリアの詩人マリーノによって始められ、その絶大な影響力のもとに大流行した。ルネサンス文化が生命力を失った時代に、その典雅と均整を理想とする古典主義からの脱皮を図るため、マリーノとその追随者たちは、詩の目的は読者を驚かすことにありとする驚異の詩学を唱え、その手段を修辞に求めて、奇想天外な隠喩(いんゆ)の発見に没頭した。そのために「奇想主義」ともよばれるこの詩法は、技巧に走って内容空疎な単なることば遊びに堕する場合が多く、歴史的にも、「マリーノ主義」の謂(いい)であるこの呼称は17世紀イタリア文学の退廃的傾向をさすものとして、長らく否定的に用いられてきた。とはいえ、保守化した古典主義と決別して新しい詩的言語を知的に探求したという側面は否定することができず、20世紀に入ってからは、バロック復権の潮流のなかで、評価の見直しが行われている。
[林 和宏]