改訂新版 世界大百科事典 「マルバノキ」の意味・わかりやすい解説
マルバノキ
Disanthus cercidifolius Maxim.
秋の紅葉時に赤紫色の花が美しいマンサク科の1属1種の落葉低木。別名ベニマンサク。和名は〈円葉ノ木〉の意で,木曾地方の方言名に基づく。高さ3~5mになり,小枝は細く紫褐色,当年枝は先端が枯れ落ちて真の頂芽を欠く。葉は2~9cmの柄で互生し,広卵円形全縁で,基部は心形をなし,長さ4~10cm,幅5~12cm,掌状に5~7本の主脈が出る。葉が赤黄色に色づく10,11月,当年枝または前年枝の葉腋(ようえき)から出る短い柄の先に,2個の紅紫色の花が背中合せに開く。花は両性で,5裂する浅い萼筒から線状披針形で長くとがる花弁が5枚星状にひろがる。花弁の基部にある1対の腺体から特有のにおいを出す。翌年の花期に蒴果(さくか)が熟し,4片に裂けて8~10個の黒い種子をはじきとばす。中部地方西部および滋賀,広島,高知の各県と中国南部の暖帯上部山地に分布し,谷間の水分の多い岩石地に生育する。秋の紅葉と花を観賞するため,ときに庭園に植えられる。
執筆者:濱谷 稔夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報