日本大百科全書(ニッポニカ) 「マーデルング定数」の意味・わかりやすい解説
マーデルング定数
まーでるんぐていすう
Madelung constant
イオン結晶の内部におけるイオン間の静電相互作用を計算するときに使われる定数。イオン結晶の凝集エネルギーを研究し、最初にその和を計算したマーデルングE. Madelungにちなんでこのようによばれる。結晶内のあるイオンを原点に置き、反対符号イオンとの引力、同符号イオンからの反発力を無限遠まで順次計算していくと、一定値となる係数を得る。これがマーデルング定数Maで、陽イオンAz+と陰イオンXz-とがつくる組成AaXxの結晶1モルでの静電相互作用エネルギーEは
E=-z+z-NAMa{(a+x)/2}/4πε0r
となる。NAはアボガドロ定数、ε0は真空中の誘電率である。定数Maの値は、結晶構造の型によってイオンの配列が異なるため、塩化ナトリウム型で1.7476、塩化セシウム型で1.7627、閃亜鉛(せんあえん)鉱型で1.6381、繊維亜鉛鉱型で1.6413、蛍石(ほたるいし)型で1.6796、ルチル型で1.6053となるが、文献によってはMa{(a+x)/2}の値を採用することもある。
[岩本振武]