M&A(読み)えむあんどえー(英語表記)merger and acquisition

共同通信ニュース用語解説 「M&A」の解説

M&A

他の企業を買収したり合併したりすること。事業拡大多角化に加え、他社技術ノウハウを取り入れて経営強化や競争力向上につなげる。後継者不足に悩む中小にとって円滑な事業承継手段にもなり、政府は税制面で支援している。2021年度税制改正ではM&Aを実施した企業の負担軽減のため、法人税の支払いを先延ばしできる制度を新設した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「M&A」の意味・わかりやすい解説

M&A
えむあんどえー
merger and acquisition

会社の合併(merger)と株の買占め(acquisition)を組み合わせた用語で、企業買収総称として用いられる。対象企業の経営者が賛同しているかどうかによって、友好的なものと敵対的なものとに分かれる。会社法には、両当事会社が互いに手続を踏みながら進める友好的な手段として、事業譲渡、合併、株式交換、株式移転、会社分割が定められている。一方、証券市場で株式を買い占める行為は、対象企業の同意を必要としないことから、友好的M&Aのみならず、敵対的M&Aの手段としても用いられる。

 新規の業務や新たな商圏に進出する場合、自ら会社を設立することも少なくないが、M&Aを用いれば、時間を短縮することが可能である。また、事業の再構築の結果、不必要となった会社や事業部門を売却したり、他社を買収することで自社の主力事業を強化したりする場合にも、M&Aは効果的である。こうしたM&Aは、友好的であると敵対的であるとを問わず、企業価値の向上や劣化防止に役だつため、社会的にみて有用である。

 しかしながら、敵対的なM&Aをしかける者のなかには、買い占めた株式を会社側に高値で買い取らせることを目的としたり、買収後に対象会社の資産を切り売りすることを目的としたりする者もいる。また、M&Aをしかけるふりをして、その過程で生まれる株価乱高下を用いて鞘(さや)取りをする者も見受けられる。このような行為は、対象会社の企業価値を不必要に毀損(きそん)したり、市場の公正性をゆがめたりする点で、社会的な正当性をもち得ない。

 近時の傾向としては、2005年に株式会社ライブドアがラジオ局のニッポン放送株を買い占めた事件を皮切りに、経営権の奪取を目的とした敵対的M&Aや、投資ファンドによる敵対的M&Aが目だつようになった。これを受けて、上場企業の側では、買収防衛策の導入が盛んに行われている。

[野村修也]

『小川好澄監修『図解雑学 M&A』改訂新版(2005・ナツメ社)』『村田英幸著『M&Aの法務――主要法制の完全整理』(2006・中央経済社)』『井上光太郎・加藤英明著『M&Aと株価』(2006・東洋経済新報社)』『高谷知佐子編『M&Aの労務ガイドブック』(2007・中央経済社)』『北地達明・北爪雅彦著『M&A入門』(日経文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「M&A」の意味・わかりやすい解説

M&A
エムアンドエー
merger and acquisition

企業の合併 mergerと買収 acquisitionの略語。新規分野進出やグループ再編,投機を目的に実施される。アメリカ合衆国では 1960年代に最初のブームが起こり,巨大企業集団の形成が進んだ。近年は,株価が割安と思われる企業の株を買い占め,経営陣の入れ替えや不採算部門売却を通じて株価を押し上げ売却益を確保する敵対的 M&Aも多い。買収を受けた企業は防衛のため自社に有利な条件で別の友好的な企業に身売りしたり,各種の訴訟を連発することがある。1980年代には,円高進行や貿易摩擦の激化に伴うリスクを回避するため,日本企業による海外進出や M&Aが活発になった。しかしバブル経済崩壊後は,日本の大企業がリストラクチャリング(事業の再構築)の一環として子会社などを売却する案件が多い。

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