日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミカ書」の意味・わかりやすい解説
ミカ書
みかしょ
Mîykāh ヘブライ語
The book of Micah 英語
『旧約聖書』中の十二小預言書の第6書。ミカの預言を収録し、7章からなる。ミカはエルサレムの南西30キロメートル余りのモレシテの出身で、紀元前8世紀に活躍した。同時代のイザヤがエルサレムの上流階級の出身であるのとは対照的に、農村を基盤として貧しい者の立場から正義を求めた預言者といわれる。都会の支配層の暴政、宗教家の腐敗堕落を糾弾し、神の徹底的な審判の到来を告げ、聖都エルサレムといえども敵の手に渡されて滅びると語った。宗教の本質は、祭礼や儀式にあるのではなく、正義と愛の実践、謙遵に神とともに生きることにあるとした。救い主は、聖都エルサレムでなく、地方の小さい町ベスレヘムから登場するとの預言(5章)は、イエス・キリストの誕生をさす預言として『新約聖書』に引用されている。「つるぎを打ちかえて すきとし、やりを打ちかえて かまとする」との有名な万国平和預言は4章にある(同じものが「イザヤ書」2章にも収められている)。
[清重尚弘]