国家権力を掌握して政治的支配を行う階級をいう。マルクス主義では、生産手段の所有・非所有を階級区分の基本的条件として、経済的に支配する階級が政治的に支配する階級となるとみなしている。資本主義社会では、生産手段を所有しているのは資本家階級であり、資本家階級が労働者階級を搾取する制度を維持するために国家権力を掌握し、支配階級になるというのがマルクス主義の基本的な考えである。
このような支配階級という考え方に対しては、これを経済決定論とみなして、パワー・エリートpower-eliteという概念が提起されている。たとえば、アメリカの社会学者C・W・ミルズは、経済エリート、政治エリート、軍事エリートの3部門のパワー・エリートを規定し、現代における軍事エリートの優越を説いて、支配階級というとらえ方に反対していった。このような主張は、経済の分野における資本家の支配が経営者の支配にとってかわられたとするJ・バーナムの経営者革命の主張と相まって、支配階級としての資本家階級の存在を否定する潮流をつくりだしている。
他方、現代の民主主義制度のもとでは、国民の代表が政治権力を構成しているのであるから、権力をもつ少数のエリートと、権力をもたない大多数の国民を想定するエリート・モデルでは、現状を正しくとらえられないという批判もある。エリート・モデルの批判者は、問題や事柄ごとに、決定を下すものが異なるという多元的モデルを想定する。すなわち、この人たちによれば、支配階級だけでなくパワー・エリートも存在しないことになる。
なお、資本家階級を支配階級とみなす者のなかにも、資本の所有者である資本家と資本の機能の担い手である経営者を区別し、後者を政治家や軍部とともに、支配の機能を遂行する者とみなす立場をとっている者がいる。この人たちにあっては、パワー・エリートの概念は、かならずしも否定されるべきものではない。すなわち、この人たちは、支配階級である資本家階級のもとに、支配の機能を担うパワー・エリートが従属した形で存在し、国民主権の民主主義制度を形骸(けいがい)化させるなかで現代の階級支配がみられると主張しているのである。
[河村 望]
『C・W・ミルズ著、鵜飼信成・綿貫譲治訳『パワー・エリート』上下(1958・東京大学出版会)』
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