日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミヤマカラスアゲハ」の意味・わかりやすい解説
ミヤマカラスアゲハ
みやまからすあげは / 深山烏揚羽
[学] Papilio maackii
昆虫綱鱗翅(りんし)目アゲハチョウ科に属するチョウ。日本では北海道から九州南方の種子島(たねがしま)、屋久島(やくしま)まで分布するが、多くの地域では類似のカラスアゲハに比べてはるかに少ない。国外では朝鮮半島、中国に分布し、東アジアの特産種。はねの開張は130ミリメートル内外。暖地産のものはとくに大形となる。はねの表面は黒色、光沢のある緑色鱗を密布し美しい。日本産のチョウでは最美の1種である。カラスアゲハにはない黄白色の帯が後翅裏面に現れるのがそのもっとも著しい特徴であるが、暖地産のものではこの帯が退化して痕跡(こんせき)的になることも多く、ときにまったく消失する場合もある。寒冷地では年2回(春と夏)の発生、暖地では発生回数が増えて、晩夏から初秋に第3化が発生することもある。幼虫の食草はキハダ、カラスザンショウ、ハマセンダンなどのミカン科植物。蛹(さなぎ)の状態で冬を越す。
[白水 隆]