カラスアゲハ(読み)からすあげは

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カラスアゲハ」の意味・わかりやすい解説

カラスアゲハ
Papilio bianor

鱗翅目アゲハチョウ科のチョウ。前翅長 40~65mm。翅表は黒色地に緑色鱗 (雌ではより黄色を帯びる) を一面に散布し,後翅前縁中央部には青色鱗が密集してそれが斑紋を表わしている。後翅外縁には赤色弦月紋が並ぶが,これは雌においてよく発達する。裏面も黒色で,前翅に灰白色帯がある。また雄の前翅表第1,2室に黒色ビロード様の性標がある。春型は夏型より小さく,雄でも後翅表後角に赤色紋をもつ。幼虫コクサギキハダサンショウカラタチなどを食べる。成虫は普通年2~3回,寒冷地では1回発生する。北海道本州四国九州,南西諸島,台湾中国ミャンマー朝鮮,ウスリー,サハリンなどに分布するが,沖縄本島およびその周辺の島々に産するのをオキナワカラスアゲハ P. okinawaensisといい別種とすることもある。近縁種ミヤマカラスアゲハ P. maackiiは前翅長 45~80mm,一見本種に似るが,翅表の緑色帯が顕著で,前翅裏面の白色帯は上方に広がらず一定の幅で狭い。また後翅裏面にも白色帯がある。幼虫はキハダ,カラスザンショウなどを食べる。年2回発生する。その名のように山地多く,雄は水辺に集る。北海道,本州,四国,九州,サハリン,アムール,朝鮮,中国,台湾,ミャンマーなどに分布する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カラスアゲハ」の意味・わかりやすい解説

カラスアゲハ
からすあげは / 烏揚羽
[学] Papilio bianor

昆虫綱鱗翅(りんし)目アゲハチョウ科に属するチョウ。日本では北海道より九州、さらに吐噶喇(とから)列島、奄美(あまみ)大島、沖縄本島、八重山(やえやま)列島に分布、外国では朝鮮半島、中国、台湾、トンキン、ミャンマー(ビルマ)に産出が知られている。日本産のうち沖縄本島に産するものは成虫、幼虫の形態にやや特異な点があり、別種オキナワカラスアゲハとする研究者もあるが、さらに慎重な研究を要する。はねの開張80~135ミリメートル程度。はねの地色は黒色、表面には緑色ないし青藍(せいらん)色の鱗粉を散布して美しい。北海道の高地帯では年1回の発生(7、8月)、普通、年2回の発生(春型4、5月、夏型7、8月)、日本南西の暖地ではさらに晩夏から初秋にかけて第3化が発生する。幼虫の食草はミカン科植物、とくにコクサギを好み、またカラスザンショウ、キハダ、ハマセンダン、サンショウ、イヌザンショウ、カラタチの葉などを食べる。

[白水 隆]


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