日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ミンコフスキーの時空世界
みんこふすきーのじくうせかい
Minkowski's space-time world
相対性理論で用いられる物理用語で、時間・空間を一つの空間にまとめた四次元空間をさす。1905年のアインシュタインの特殊相対性理論を数学的に基礎づけるため、数学者ミンコフスキーにより導入された考え方(1908)で、相対性理論は、この四次元空間の導入により完成されたといわれ、四次元空間はミンコフスキーの世界ともよばれる。
この四次元空間の1点は、ある場所におけるある時刻を表し、一つの事象(イベント)とよばれる。ある一つの事象に対して因果的関係のある時間的領域と関係のない空間的領域が定まり、両者の境界は光によって因果関係をもつ領域で光円錐(こうえんすい)とよばれる。時間的領域は「未来」と「過去」の不連続な二つの部分に分かれている。ミンコフスキーの時空世界のなかで連続的に生起する事象の軌跡は世界線とよばれ、つねに時間的領域のなかにある。
物理現象におけるミンコフスキーの時空世界を用いた記述は、離れた場所における因果関係の記述をわかりやすくする。また、この空間のもつ対称性であるポアンカレ変換に対する不変性は、物理学における種々の物理量の保存則の根拠となっている。すなわち、多くの物理法則はミンコフスキーの世界の構造に由来するといっても過言ではない。
[佐藤文隆]