ミンコフスキー(読み)みんこふすきー(英語表記)Hermann Minkowski

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミンコフスキー」の意味・わかりやすい解説

ミンコフスキー
みんこふすきー
Hermann Minkowski
(1864―1909)

ロシア出身のドイツの数学者。当時ロシア領であったリトアニアで生まれ、1872年、一家とともにドイツのケーニヒスベルク(現、ロシア領カリーニングラード)に移った。ケーニヒスベルク大学、ベルリン大学に学び、1895年ケーニヒスベルク大学、1896年チューリヒのスイス連邦工科大学、1903年ゲッティンゲン大学教授となった。スイス連邦工科大学教授当時、A・アインシュタインはその学生であったが、ミンコフスキーの講義ぶりはかならずしも優れたものとはいえず、アインシュタインは数学をあきらめ、理論物理学に進む決心をしたとも伝えられる。

 そのミンコフスキーが、アインシュタインの特殊相対性理論は、空間の座標x・y・zと時間tとを座標とする四次元空間において、ローレンツ変換で不変な性質を研究する幾何学とみなしうることを示したことは歴史の皮肉というべきであろうか。このx・y・z・tを座標とする空間は「ミンコフスキー空間(ミンコフスキーの時空世界)」とよばれる。

 この四次元ミンコフスキー空間の考えは、のちにアインシュタインが一般相対性理論を建設する場合にも重要な役割を果たした。すなわち、アインシュタインがその一般相対性理論を建設するときに用いた擬リーマン空間は、その各点における接空間がミンコフスキー空間であるような空間であったのである。なおミンコフスキーは、数論における幾何学的研究方法の開拓者としても知られる。

矢野健太郎

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミンコフスキー」の意味・わかりやすい解説

ミンコフスキー
Minkowski, Hermann

[生]1864.6.22. アレクソタス
[没]1909.1.22. ゲッティンゲン
ドイツの数学者。兄オスカルは有名な病理学者。ベルリン大学での3学期間を除き,ケーニヒスベルク大学に学び,ここで D.ヒルベルトや A.フルビッツと親交を結ぶ。 1885年ケーニヒスベルクで学位を取り,ボンで教えたあと,ケーニヒスベルク大学教授 (1894~96) ,チューリヒのスイス連邦工科大学教授 (96~1902) 。スイス連邦工科大学では A.アインシュタインが学生として彼の講義を聞いた。 1902年,ゲッティンゲン大学教授となり,生涯その職にとどまる。学生時代に「1つの整数を5個の整数の平方の和として表わす問題」 (1883) で,パリ科学アカデミーのグランプリを獲得。この問題は 19世紀初めに,C.ガウスが2変数の2次形式の問題として着手して以来,多くの数学者によって研究されていた。ミンコフスキーは,これを一般的に n変数の2次形式としてとらえ,いろいろの形で研究した。この理論に対するミンコフスキーの最も重要な貢献は次の2つである。 (1) 有理係数の2次形式に対し,3個の不変量を用いて,有理係数の1次変換によって同等となる性質の研究。 (2) 実係数の正値2次形式を既約にする理論の完成 (1905) 。彼は2次形式の理論と関連してディオファントス近似を研究し,そのために格子,凸体の概念を導入。これらの概念を用いる理論を彼は「数の幾何学」と呼んだ。またアインシュタインの特殊相対性理論ミンコフスキー空間と呼ばれる四次元空間のなかでとらえ,幾何学的意味を与えた。

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